キャンパス長コラム「保護者の皆さまへ④ ~『好き』は子どもの未来をつくる~」
このコラムでは、約20年間、通信制高校教員として不登校や発達特性のある子どもたち、そして保護者の皆さまと向き合ってきた経験をもとに、子育てや進路、教育について感じていることをお伝えしていきます。少しでも皆さまの安心やヒントにつながれば幸いです。
✅ 子どもの「好き」が、必ずしも将来の仕事に直結する必要がない理由について、キャンパス長自身の経験を交えてお伝えします。
✅夢中になれることや日々の体験が、子ども自身の強みや将来の進路につながっていく可能性について考えます。
「お子さまは、何をしているときが一番楽しそうですか? 夢中になっていることはありますか?」
ゲームをしているとき。マンガや本を読んでいるとき。好きなアイドルを応援しているとき。電車に乗ったり、写真を撮ったりしているとき……。
きっと、さまざまな場面や表情をご覧になっていることと思います。
そんなとき、ふとこう考えることはないでしょうか。
「今夢中になっていることが、将来何につながるのだろう」と。
保護者にとって、お子さまの将来を考えることは当然のことです。高校卒業後の進路はどうなるのか。その先の仕事はどうなるのか。考え始めれば、不安は尽きないと思います。
人によっては、今夢中になっていることが、そのまま職業につながることもあるかもしれません。ゲームが好きでゲーム業界へ進んだり、鉄道会社や芸能関係の仕事に就いたりすることもあるでしょう。
私自身、子どもの頃から歴史に興味があり、大学でも歴史学を専攻しました。
進路を決める際、友人や周囲の人から「歴史が将来、役立つことってあるの?」と言われたこともあります。
そんなとき、母親から、「自分が好きなことは突き詰めても良い。自分が決めたことには、自分で責任を持って」と言われ、進路決定を後押ししてもらったことを今でも覚えています。
私はたまたま、その後、歴史を教える仕事に就くことができました。しかし振り返ってみれば、歴史とは直接関係のない道を選ぶ可能性も十分にあったと思います。
私は、自分の好きなことが、必ずしも将来の仕事に直結しなくても良いと思っています。
趣味は趣味のまま。好きなことは好きなこととして大切にしながら、仕事は別のものを選ぶ。仕事を、好きなことを続けていくための土台と考える。それでも良いのではないでしょうか。
一方で、子どもたちの「好き」が、間接的に将来の道につながることもあります。
ゲームなら、攻略するために試行錯誤する力。
推し活なら、情報を集めたり発信したりする力。
鉄道なら、地域や地理への興味。
イラストなら、自分の考えを表現する力。
本人は「勉強している」つもりがなくても、何かに夢中になっている時間には、調べる、考える、工夫する、人とつながるといった、さまざまな学びが起きています。
だからこそ、保護者の皆さまには、お子さまの「好き」を一緒に面白がっていただけたらと思います。
「すごく詳しいね」
「そんなに面白いところがあるんだ」
「何がそんなに好きなの?」
そんな言葉をかけてみてください。
時には、一緒に“推し活”をしてみても良いかもしれません。
そうした関わりが、自分自身の得意なことや力に気づくきっかけになり、やがて進路を考える際のヒントになることもあります。
高校は、自分の「好き」に気づき、さまざまな活動や人との出会いを通して、自分の進路を少しずつ描いていく場所でもあります。
「好き」は、単なる息抜きや趣味だけではなく、未来への入り口につながる大切なものでもあると、私は思っています。
そして今、「好きなことが見つからない」という子どもたちもいるでしょう。
それも、決して焦る必要はありません。
いろいろなことを経験していく中で、「ちょっと楽しい」が生まれ、その「楽しい」が、いつか「好き」に変わっていくことがあります。
だからこそ私は、学校には子どもたちがさまざまなことに出会い、「やってみようかな」と思える機会が必要だと考えています。
そして、そんな経験を重ねながら、自分なりの「好き」や未来につながる何かを見つけられるキャンパスをつくっていきたいと思っています。
もし、お子さまが今夢中になっているものがあれば、ぜひ一度、
「何がそんなに面白いの?」
と聞いてみてください。
その答えの中に、まだ本人も気づいていない未来の種が隠れているかもしれません。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。 次回は、「人間関係はジグソーパズル」をテーマにお届けします。
「キャンパス長プロフィール」
自身の不登校経験を踏まえ、約20年間、広域通信制高校の教員として様々な子どもたちの支援に取り組む。専門は歴史教育、特別支援教育など。学校だけでなく、地域や様々な専門機関との連携を大切にしながら、一人ひとりの得意・不得意を認め合い、それぞれが力を発揮できる学校づくりを目指して日々奮闘中。 現在、クラーク記念国際高等学校 横浜青葉キャンパス長。