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「自信がなく、すぐに『無理』と言います」

簡単にすぐ『無理』と言っているように見えませんか?
その一言の奥にある“不安の正体”を一緒にほどいていきましょう!

この記事ではこんなことがわかります!

自信がなく、すぐに「無理」と言う子ども。

その言葉の奥にある失敗への不安やつまずきを整理し、小さな成功体験を積みながら、自分で一歩を選べるよう支える家庭での声かけや関わり方を紹介します。


・子どもが「無理」と言う背景にある不安の捉え方
・自信を育てる小さな成功体験と目標設定のコツ
・「無理」をほどき、一歩を支える家庭での声かけ

「うちの子、何かを始める前からすぐに『無理』と言うんです」

保護者の方から、こうした相談を受けることがあります。

新しい課題に取り組む前に「無理」。
苦手な教科を開いた瞬間に「無理」。
発表や行事の話が出ただけで「絶対無理」。

少し難しそうなことに出会うと、挑戦する前からあきらめてしまう。

親としては、もどかしくなりますよね。

「やってみないと分からないじゃない」
「最初から無理って言わないの」
「そんなこと言っていたら何もできないよ」

そう言いたくなる気持ちは、とてもよく分かります。

でも、子どもの「無理」という言葉は、単なる甘えやわがままとは限りません。

むしろ、その一言の奥には、いろいろな不安が隠れていることがあります

失敗するのが怖い。
完璧にできないならやりたくない。
何から始めたらいいのか分からない。
目標が大きすぎて、最初の一歩が見えない。
過去にうまくいかなかった経験が残っている。。

つまり、「無理」は拒否の言葉である前に、助けを求めるサインなのかもしれないと受け止めましょう。

目次

「無理」と言う子は、挑戦したくないのではない

僕は、「無理」と言う子どもが、本当に何もしたくないわけではないと思っています。

もちろん、面倒くさいという気持ちが混ざっていることもあるでしょう。

楽をしたいときもあると思います。それは大人も同じです。

でも、何度も「無理」と言う子をよく見ていると、そこには挑戦への怖さがあります。

特に、これまで「うまくいった経験」が少ない子にとって、新しいことに向かうのはとても勇気がいることです。

頑張ったのにできなかった。
人前で間違えて恥ずかしかった。
比べられて傷ついた。
努力したのに結果が出なかった。
誰かに笑われた。

そういう経験が積み重なると、子どもは挑戦する前に自分を守ろうとします。

「どうせやっても無駄」
「どうせ自分にはできない」
「だったら最初からやらない方が傷つかない」

このように考えるようになるのです。

だから、「無理」と言った子に対して、すぐに「そんなこと言わないの」と返すだけでは、根本的な支援になりません。

必要なのは、「なぜ無理だと感じているのか」を一緒に見ていくことです。

「自信を持ちなさい」では、自信は育たない

子どもが自信をなくしているとき、大人はつい言いたくなります。

「もっと自信を持ちなさい」
「あなたならできるよ」
「大丈夫、やればできる」

もちろん、励ましたい気持ちから出てくる言葉です。僕も、そう言いたくなることがあります。

でも、自信のない子にとって、「自信を持ちなさい」はなかなか難しい言葉です。

なぜなら、自信は気合いで持つものではないからです。

自信は、「できた」という経験から少しずつ育ちます。

「前よりできた」
「ここまでは分かった」
「一人では無理だったけれど、助けを借りたらできた」
「失敗したけれど、もう一度やったら少し進んだ」

こうした経験が積み重なって、ようやく子どもは「次も少しやってみようかな」と思えるようになります。つまり、自信を育てるには、根拠のない励ましよりも、根拠のある小さな成功体験が必要なのです。

「無理」の正体を分けて考える

子どもが「無理」と言ったとき、まず大人がしたいのは、その言葉を分解することです。

本当に能力的に難しいのか。
やり方が分からないのか。
量が多すぎるのか。
失敗が怖いのか。
人に見られることが不安なのか。
完璧にやろうとして苦しくなっているのか。

「無理」の中身は、一人ひとり違います。たとえば、数学の課題を前にして「無理」と言う子がいたとします。その子は、問題が全部分からないわけではないかもしれません。最初の一問でつまずいて、全部が無理に見えているだけかもしれません。あるいは、解き方は分かるけれど、間違えたら怒られると思って手が止まっているのかもしれません。

発表の場面で「無理」と言う子も同じです。人前で話す内容がないのか。声を出すのが恥ずかしいのか。失敗したときに笑われるのが怖いのか。そもそも発表の準備の仕方が分からないのか。理由によって、支援の仕方は変わります。

だから、まずはこう聞いてみてください。

「何が一番無理そうに感じる?」
「どこまでならできそう?」
「一人でやるのが不安? やり方が分からない?」
「全部じゃなくて、一つだけやるなら何ができそう?」

この問いは、子どもを責めるためではありません。「無理」を少し具体的にしていくための問いです。

主体的に動くための三つの力

これまでのシリーズでも、子どもが自分で学び、動き出すためには、いくつかの力が必要だとお話ししてきました。今回のテーマである「無理」と言ってしまう子にも、同じことが言えます。

主体的に行動するためには、三つの力が必要です。
一つ目は、目標設定力です。

これは、大きな夢を語る力だけではありません。むしろ大切なのは、「ちょっと背伸びすれば届く目標」をつくる力です。いきなり「英語を得意にする」では大きすぎます。
「次の小テストで満点を取る」も、今の状態によっては苦しくなることがあります。

それよりも、

「今日は単語を五つ覚える」
「数学の例題を一問だけ解く」
「発表原稿の最初の三行だけ書く」
「先生に一つだけ質問する」

このように、行動に落とし込める目標をつくることが大事です。

結果の目標だけではなく、取り組みの目標を持つ。

これをプロセス目標と言ってもいいと思います。

二つ目は、メタ認知力です。

これは、自分の状態を知る力です。

何ができているのか。
何がまだできないのか。
どこで止まっているのか。
何が分かれば次に進めるのか。

自分の現在地が分からないと、人はただ不安になります。山の頂上だけを見上げて、「こんな高いところまで行けるわけがない」と思ってしまうのです。でも、「今は一合目にいる」「次はあの休憩地点まで行けばいい」と分かれば、少し動けるようになります。

三つ目は、主体的意思決定力です

これは、目標に向かって、方法を自分で選ぶ力です。

一人でやるのか。
誰かに聞くのか。
動画を見るのか。
紙に書くのか。
声に出すのか。
まず簡単な問題から始めるのか。

方法を自分で選べるようになると、子どもは「やらされている」状態から少し抜け出せます。

「無理」と言ってしまう子は、この三つのどこかでつまずいていることが多いのです。

目標が高すぎる。
自分の現在地が見えていない。
やり方を選ぶ経験がない。

だから、必要なのは「もっと頑張れ」ではなく、この三つを一緒に整えていく支援です。

小さすぎるくらいの一歩でいい

自信のない子に必要なのは、大きな挑戦ではありません。小さすぎるくらいの一歩です。

大人から見ると、「それだけ?」と思うかもしれません。でも、その子にとっては大きな一歩であることがあります。

ノートを開くだけ。
問題文を一行読むだけ。
先生に「ここが分かりません」と言うだけ。
発表の練習を家族の前で十秒だけやる。
友達に一言だけ返事をする。

これでいいのです。

大切なのは、「できた」という感覚を積み重ねることです。もちろん、いつまでも小さな一歩だけでよいわけではありません。でも、最初の一歩が大きすぎると、子どもは動けません。

階段は、一段ずつだから上れます。最初から壁を登らせようとすれば、誰だって「無理」と言いたくなります。

親ができる言葉がけ

家庭でできる関わり方も、少し工夫できます。

子どもが「無理」と言ったとき、すぐに否定しないことです。

「無理じゃないでしょ」
「やる前から言わないの」
「みんなやっているよ」

こう返すと、子どもは自分の不安を分かってもらえなかったと感じることがあります。

代わりに、こんなふうに聞いてみてください。

「そっか。どのあたりが無理そう?」
「全部が無理? それとも最初が難しい?」
「一人でやるのが不安なのかな?」
「十分だけならできそう?」
「手伝うとしたら、どこを手伝えばいい?」

この声かけは、「無理」を受け入れて終わるためのものではありません。「無理」の正体を一緒に探すためのものです。そして、少しでも動けたら、結果だけでなく、その一歩を見てあげてください。

「最後までできたね」だけではなく、

「最初にノートを開けたね」
「分からないところを言えたね」
「途中でやめずに、もう一回考えたね」
「自分で方法を選べたね」

こうしたプロセスを評価する言葉が、子どもの中に「自分は少し動けた」という記憶を残します。

クラークでできる、小さな挑戦の支え方

クラーク記念国際高等学校では、子どもが「無理」と感じていることを、本人だけの問題にしません。

たとえば、学習計画を立てて振り返る「リフレクション」の取り組みがあります。

厚木キャンパスの紹介では、生徒自身が学習計画や振り返りを行い、「何ができたのか」「何ができなかったのか」を確認し、次の行動につなげていく実践が紹介されています。

これは、先ほど述べたメタ認知力を育てる支援そのものです。

また、生徒が相談しやすい先生を選ぶ「パーソナルティーチャー制度」も、クラークらしい支援の一つです。学習面だけでなく、進路や学校生活についても寄り添いながら支える制度として紹介されています。

さらに、スマートスタディコースでは、AIや動画、オンライン授業などを活用し、自分に必要な学びを自分のペースで進めること、そしてコーチングによって学習プランニングや目標設定を生徒と一緒に行うことが説明されています。

「無理」と言ってしまう子に必要なのは、いきなり大きな自信を持たせることではありません。安心できる大人と一緒に、自分の現在地を確認し、小さな目標を決め、できたことを振り返ることです。家庭だけで抱え込まなくていい。

学校にも、子どもの一歩を支える役割があります。

できた経験が、次の挑戦を連れてくる

「無理」と言う子に必要なのは、根性論ではありません。

必要なのは、目標を小さくすること。
現在地を見えるようにすること。
方法を選べるようにすること。
そして、できた経験を積み重ねることです。

一度で劇的に変わるわけではありません。

昨日まで「無理」と言っていた子が、今日から急に何でも挑戦するようになることは、あまりありません。でも、ほんの少しなら変わります。

「全部は無理だけど、ここだけならできる」
「一人では無理だけど、聞けばできる」
「前はできなかったけど、今回は少し分かった」
「失敗しても、もう一回やればいいかもしれない」

この感覚が育ってくると、子どもの中に小さな自信が生まれます。自信とは、「自分は何でもできる」と思うことではありません。

「できないことがあっても、何か方法を探せる」
「失敗しても、次の一歩を考えられる「全部は無理でも、少しなら進める」

そう思えることです。

「無理」は終わりの言葉ではない

子どもが「無理」と言ったとき、大人は不安になります。

このまま挑戦しない子になってしまうのではないか。
逃げ癖がついてしまうのではないか。
社会に出て困るのではないか。

でも、僕は「無理」という言葉を、終わりの言葉にしなくていいと思っています。

「無理」は、始まりの言葉にもなります。

何が無理なのか。
どこまでならできるのか。
どのような支援があれば進めるのか。
どんな目標なら届きそうなのか。
どのような方法なら試せそうなのか。

そこを一緒に考える入口になるからです。

子どもに必要なのは、「無理と言わない子」になることではありません。「無理」と感じたときに、自分の状態を見つめ、助けを求め、方法を選び、小さな一歩を踏み出せるようになることです。僕は、その力こそが、これからの時代を生きる子どもたちにとって大切な力だと思っています。

そして、その力は、家庭の中の小さな関わりからも、学校での丁寧な支援からも育てることができます。

「無理って思うんだね。じゃあ、どこからなら始められそう?」

この一言から、子どもの挑戦は始まるのだと思います。そして、その一歩をその子なら必ず踏み出せるようになる。そう心から信じて待ちましょう。

■山本崇雄先生プロフィール■

進徳女子高等学校校長(2027年度より環太平洋大学広島高等学校)・日本パブリックリレーションズ学会前理事長ほか。 都立中高一貫教育校を経て、2019年より複数の学校及び団体・企業でも活動する二刀流(副業)教師。

Apple Distinguished Educator、LEGO® SERIOUS PLAY® メソッドと教材活用トレーニング終了認定ファシリテーター。「教えない授業」と呼ばれる自律型学習者を育てる授業を実践。子どもから社会人まで、自律型人材育成をテーマにした講演会、出前授業、執筆活動を精力的に行っている。

検定教科書『NEW CROWN ENGLISH SERIES』『My Way』(三省堂)の編集委員を務めるほか、著書に『「学びのミライ地図」の描き方』(学陽書房)『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(日経BP社)、『学校に頼らなければ学力は伸びる』(産業能率大学出版部)『「勉強しなさい!」と言わない子育て 学ぶ力の育て方』(時事通信出版)『「教えない」から学びが育つ』(ウェッジ)ほか、監修書に『21マスで基礎が身につく英語ドリルタテ×ヨコ』シリーズ(アルク)がある。  

◼︎Official Website

◼︎note https://note.com/takao_y

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