「勉強しているのに成果につながりません」

勉強しているように見えるのに、なんで成績が上がらないんだろう?
そう思っている親御さん、一緒に考えていきましょう!
勉強しているのに成果や点数につながらない理由を、学び方や振り返りの視点から整理。
成績だけで判断せず、子どもの努力を次の成長につなげる関わり方を紹介します。
焦らず一歩ずつ応援していきましょう。
・勉強しても点数が伸びない理由
・努力を成果につなげる学び方の見直し方
・成績だけで判断しない声かけのヒント
点数の前に見たいのは、“どう学んだか”という成長の跡
「うちの子、勉強しているんです。でも、なかなか成果につながらないんです」
保護者の方から、こうした相談を受けることがあります。
机には向かっている。
ノートも開いている。
テスト前にはそれなりに時間もかけている。
それなのに、返ってきた答案を見ると点数が伸びていない。
本人も落ち込む。親もがっかりする。そして、つい言いたくなる。
「こんなにやっているのに、どうしてできないの?」
この言葉の裏には、親の不安があります。
努力が報われない経験が続くと、子どもが自信をなくしてしまうのではないか。
頑張っても無駄だと思ってしまうのではないか。
将来、大丈夫なのか。
その不安は、とてもよく分かります。
でも、僕はここで一度、点数から少しだけ目を離してみたいのです。
なぜなら、子どもの成長は、点数だけには表れないからです。
点数は大事。でも、点数だけで見ない
もちろん、テストの点数は大切です。
点数は、今どこまで理解できているかを知る一つの手がかりになります。
入試や進路選択に関わることもあります。
だから、「点数なんて気にしなくていい」と言うつもりはありません。
でも、点数だけで子どもを評価してしまうと、見落としてしまうものがあります。
それが、プロセスです。
☑️どんな準備をしたのか。
☑️どこでつまずいたのか。
☑️分からないことにどう向き合ったのか。
☑️一度失敗したあと、もう一度やり直そうとしたのか。
☑️自分なりに工夫したのか。
こうした過程の中に、その子の成長があります。
以前にもお話ししましたが、家庭での学びは「何時間机に向かったか」だけでは測れません。
今回さらに大事にしたいのは、
「その時間の中で、どんな学び方をしていたのか」という視点です。
一時間勉強しても、分かっていることをただ眺めているだけなら、力はつきにくい。
反対に、二十分でも、自分の間違いに向き合い、次にどうするかを考えられたなら、その二十分には価値があります。
サボって点数を取る子、努力しても点数が出ない子
少し極端な問いを投げかけます。

手を抜いていても、いい点数を取る子がいます。
どんなに努力しても、なかなか点数に表れない子がいます。
さて、僕たちはどちらの子を評価するのでしょうか。
もちろん、効率よく学び、結果を出せることは素晴らしい力です。
短い時間で本質をつかみ、必要なことを選び取る力も、これからの時代には大切です。だから、手を抜いているように見えても成果を出す子を否定したいわけではありません。
でも、僕が同じくらい、
いや、それ以上に見逃したくないのは、点数に表れなくても努力を続けている子の姿です。
たとえば、こんなふうに考えてみてください。
手を抜いて勉強して東大に受かる子がいる。
一生懸命努力しても東大に落ちる子がいる。
どちらが成功者でしょうか。
これは、大学名の話をしたいのではありません。
結果だけで人の価値を決めてしまうことへの問いです。
前者には、目標に向かって効率よく結果を出した経験があります。
それは確かに価値があります。
一方、後者には、目標に向かって努力を続けた経験があります。
思うように結果が出なくても、投げ出さず、悔しさを抱えながら、それでも前に進もうとした経験があります。
僕は、この経験を軽く扱いたくありません。
なぜなら、努力を続ける力は、非認知能力そのものだからです。
粘り強さ。
自分を立て直す力。
失敗から学ぶ力。
すぐに結果が出なくても続ける力。
これらは、テストの点数のように一枚の答案には表れにくい。
でも、人生の長い時間の中では、ものすごく大きな力になります。
「頑張ったね」で終わらせない
ただし、ここで注意したいことがあります。
「点数よりプロセスが大事です」と言うと、
「じゃあ、頑張っていればそれでいいのですね」と受け取られることがあります。
そうではありません。
努力を認めることと、努力の中身を見ないことは違います。
「頑張ったね」で終わってしまうと、次に何を変えればいいのかが見えません。
子どもも、「自分は頑張っているのに結果が出ない」という苦しさの中に残されてしまいます。
大切なのは、努力を否定せずに、学び方を一緒に見直すことです。
「今回はどんな準備をしたの?」
「一番時間をかけたのはどこ?」
「テストでできたところはどこ?」
「思ったよりできなかったところはどこ?」
「次に同じ範囲が出るとしたら、準備の仕方をどう変える?」
こうした問いを通して、子ども自身が自分の学びを振り返れるようにする。
これが、結果だけではなくプロセスを見るということです。
勉強しているのに伸びない理由は、「やり方」が合っていないこともある
勉強しているのに成果につながらない子の中には、
能力がないのではなく、学び方を知らないだけという子がたくさんいます。
たとえば、教科書を何度も読んでいるけれど、実際に問題を解いていない。
ノートをきれいにまとめているけれど、覚える練習をしていない。
間違えた問題を赤で直しているけれど、なぜ間違えたのかを考えていない。
テスト前日になって、ようやく範囲の広さに気づく。
これでは、努力が成果につながりにくいのです。
本人は「やっている」と感じています。
実際、時間も使っています。
けれど、その努力が点数につながる形になっていない。
だから必要なのは、「もっと勉強しなさい」ではなく、「どう学ぶか」を一緒に考えることです。
これから必要なのは、戦略的学習力
僕が学校改革の中で大事にしたい力の一つに、「戦略的学習力」があります。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言えば、これは「自分の学びを作戦として組み立てる力」です。
☑️ただ目の前の宿題をこなすのではなく、先を見通す。
☑️自分に必要な学習方法を選ぶ。
☑️実際にやってみる。
☑️結果を振り返る。
☑️次の作戦を立て直す。
このサイクルを自分で回していく力です。
今は、学び方そのものを手に入れやすい時代です。
英語の音読の仕方、数学の解き直しの方法、暗記の工夫、動画教材、学習アプリ、オンライン講義。
探せばたくさんの方法があります。
クラークのような通信制の学校の良さは、このような多様な学び方を自然に手に入れられることです。
でも、方法がたくさんあるからこそ、「自分には何が必要か」を選ぶ力が必要になります。
そこで大事になるのが、AARという学習サイクルです。
AARサイクルで、学びを回す
AARとは、Anticipation、Action、Reflectionの頭文字です。
日本語で言えば、
A=見通しを持つ
A=実行する
R=振り返る
という流れです。
まず一つ目のAは、見通しを持つことです。
-いつテストがあるのか。
-どの範囲が出るのか。
-どの教科に時間がかかりそうなのか。
-自分はどこが苦手なのか。
-何日前から始めれば間に合いそうなのか。
これを考えることです。
多くの子は、テスト直前になってから「範囲が広すぎる」と焦ります。
でも、それは能力の問題というより、見通しの問題です。
先を見ていなかったから、準備が後手に回ってしまうのです。
次のAは、実行することです。
-立てた計画通りに、まずやってみる。
-英単語を覚える。
-数学の問題を解く。
-理科や社会の重要語句を確認する。
-国語の文章を読み直す。
ここで大切なのは、完璧な計画を立てることではありません。
計画は、やってみないと分かりません。
実行してみて初めて、「思ったより時間がかかる」「この方法では覚えられない」「ここは意外とできる」と分かってきます。
そして最後のRが、振り返りです。
-何ができたのか。
-何ができなかったのか。
-計画は現実的だったのか。
-時間の使い方は合っていたのか。
-次に同じことをするなら、何を変えるのか。
この振り返りがなければ、努力は積み上がりません。
テストが終わったあと、点数だけ見て一喜一憂して終わるのではなく、「次の作戦」に変える。
これが戦略的学習力です。
親が見るべきなのは、答案よりも作戦会議
テストが返ってきたとき、親はどうしても点数に目がいきます。
「何点だったの?」
「平均点は?」
「前より上がったの?」
「どうしてここを間違えたの?」
気持ちは分かります。
でも、子どもからすると、点数を見た瞬間に責められると、答案を隠したくなります。
振り返りどころではありません。
「今回、準備していたところで取れた問題はどれ?」
「勉強したのに取れなかった問題はある?」
「まったく手をつけていなかったところはどこ?」
「次は、何日前から始めたらよさそう?」
「やり方を変えるとしたら、何を変える?」
この聞き方にすると、点数の話が責める時間ではなく、次の学びをつくる時間になります。
親がすべて答えを出す必要はありません。大事なのは、子どもが自分の学びを言葉にすることです。
「今回は暗記に時間をかけすぎた」
「問題を解く練習が足りなかった」
「数学は分かったつもりになっていた」
「英語は音読した方が覚えやすかった」
こうした気づきが出てくれば、次につながります。
成果が出ない時期にも、育っている力がある
勉強しているのに点数が伸びない時期は、本人にとっても苦しいものです。
そう思ってしまうこともあります。
だからこそ、大人が見てあげたいのは、点数の奥にある小さな変化です。
これらは、点数にはすぐに表れないかもしれません。
でも、確実にその子の中に積み上がっている力です。
そして、その力は、勉強以外の場面でも生きていきます。
仕事で壁にぶつかったとき。
人間関係でうまくいかなかったとき。
新しいことに挑戦するとき。
思うような結果が出なかったとき。
そのときに、自分で見通しを持ち、やってみて、振り返り、次の一歩を考える力があるかどうか。
それは、点数以上に人生を支える力になります。
結果を見ないのではなく、結果の見方を変える
最後に、もう一度お伝えしたいことがあります。
結果を見なくていい、という話ではありません。
結果は見ます。
点数も見ます。
できたこと、できなかったことも確認します。
でも、結果で子どもを裁かない。
結果を、次の学びの材料にする。
ここが大切です。
「何点だったの?」で終わるのではなく、
「そこに至るまで、どう取り組んだの?」と聞く。
「なんでできなかったの?」ではなく、
「次はどんな作戦にする?」と聞く。
「もっと頑張りなさい」ではなく、
「頑張り方を一緒に見直してみよう」と言う。
この関わりが、子どもの戦略的学習力を育てます。
勉強しているのに成果につながらない。
その状態は、決して失敗ではありません。
むしろ、自分の学び方を見直す大切な入口です。
・点数に表れない努力を認めること。
・その努力が成果につながるように、学び方を整えること。
・AARのサイクルを回しながら、自分で学ぶ力を育てていくこと。
この三つがそろったとき、子どもは少しずつ変わっていきます。
僕は、目先の点数だけで子どもを評価するのではなく、結果に向かうまでの歩き方を見ていきたいと思っています。
■山本崇雄先生プロフィール■
進徳女子高等学校校長(2027年度より環太平洋大学広島高等学校)・日本パブリックリレーションズ学会前理事長ほか。 都立中高一貫教育校を経て、2019年より複数の学校及び団体・企業でも活動する二刀流(副業)教師。
Apple Distinguished Educator、LEGO® SERIOUS PLAY® メソッドと教材活用トレーニング終了認定ファシリテーター。「教えない授業」と呼ばれる自律型学習者を育てる授業を実践。子どもから社会人まで、自律型人材育成をテーマにした講演会、出前授業、執筆活動を精力的に行っている。
検定教科書『NEW CROWN ENGLISH SERIES』『My Way』(三省堂)の編集委員を務めるほか、著書に『「学びのミライ地図」の描き方』(学陽書房)『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(日経BP社)、『学校に頼らなければ学力は伸びる』(産業能率大学出版部)『「勉強しなさい!」と言わない子育て 学ぶ力の育て方』(時事通信出版)『「教えない」から学びが育つ』(ウェッジ)ほか、監修書に『21マスで基礎が身につく英語ドリルタテ×ヨコ』シリーズ(アルク)がある。
◼︎note https://note.com/takao_y


