プロバスケ・広島ドラゴンフライズ寺嶋良選手が来校!「夢・挑戦・達成」の真髄を語る特別講演会レポート
2026年5月20日、クラーク高校 広島キャンパスに特別なゲストが訪れました。地元広島が誇るBリーグのプロバスケットボールクラブ「広島ドラゴンフライズ」のポイントガード、寺嶋 良選手です。
総合進学コースとスポーツコース(男子バスケットボール専攻)が参加した今回の講演会は、教室での直接講義とオンラインを併用して実施。変化の激しい時代を生きる生徒たちにとって、第一線で戦うアスリートの言葉は、未来への羅針盤そのもの。単なる成功体験の披露ではなく、一人の人間としての苦悩や読書を通じて培った深い知性を分かち合うことで、生徒たちが自分自身の人生を前向きに捉え直すきっかけを提供したい――。そんな願いを込めて、私たちの校訓である「夢・挑戦・達成」をテーマとした特別な時間が始まりました。
朝マックの思い出から始まった、等身大のメッセージ
大きな拍手に迎えられて登壇した寺嶋選手。その第一声は、意外にも親近感あふれる「食」の話題。「この近くの白島エリアには、4年前によく来ていたんです」と語る寺嶋選手。当時、白島の交差点近くにあるマクドナルドで朝マックを食べるのが日課だったそう。
「皆さん、ソーセージエッグマフィンの最高の食べ方を知っていますか?セットのハッシュポテトをマフィンの中に挟んで食べるんです。サクサク感が増して最高に美味しい。それをスプライトで流し込むのが寺嶋流。今日の講演の内容は1ヶ月後には忘れているかもしれないけれど、この食べ方だけは覚えて帰ってくださいね(笑)」
そんなユーモアあふれるエピソードに、緊張していた生徒たちの顔がパッとほころびます。スター選手がぐっと身近な存在に感じられた瞬間、会場の空気は一気に「対話」の場へと変わっていきました。
「夢」の捉え方。職業ではなく「目的」で考える100点の人生
寺嶋選手が最初に投げかけたのは、「夢はあってもなくてもいい」という、中高生にとっては驚きの一言でした。「夢を持ちなさい」という周囲の言葉にプレッシャーを感じている生徒たちを優しく解き放つような言葉です。しかし、その真意は、彼自身の小学校6年生の時の卒業文集に隠されていました。
文集には「プロバスケットボール選手になる」という夢とともに、ある一文が記されていました。
「プロになったら、家族を試合会場に招待する」
寺嶋選手は分析します。「プロ選手になる」という職業を目指すことは、あくまで「50点」の夢。対して「家族を招待して喜んでもらう」という目的を持つことが「100点」の夢なのだと語ります。
実は、寺嶋選手には痛切な後悔があります。プロとして歩み始め、「いつでも招待できる」と思っていた矢先、お父様が突然帰らぬ人となったのです。開幕戦に招待する直前の出来事でした。「家族全員を試合に招待する」という本当の目的を果たせなかった悲しみは、今も寺嶋選手の胸に刻まれています。
「夢=職業」と考えてしまうと、その職に就けなかったり、怪我で続けられなくなったりした時に全てを失ってしまいます。しかし「誰かを笑顔にしたい」といった「目的(100点の夢)」があれば、たとえ形を変えても道は何度でも作り直せる。挫折を経験することの多い多感な時期の生徒たちにとって、この言葉は深い救いと納得感を持って響いていました。
「挑戦」の作法。小さなドアの開け方を学ぶ
大きな夢を前に立ちすくむ生徒たちに向け、寺嶋選手は愛読書である漫画『宇宙兄弟』の言葉を贈ってくれました。「人生にはバカでかいドアなんて存在しない。あるのは『小さなドア』がいっぱいあるだけだ」というメッセージです。
寺嶋選手自身、プロという巨大な扉を開けるまでに、数え切れないほどの「小さなドア」を意地で開け続けてきたと言います。具体的に示してくれたリストは、「スリーポイントシュートが届くようになる」や「小学校での地区優勝」「中学校での東京都優勝」など、驚くほど地道なものでした。
「才能がある人は100枚のドアで済むかもしれない。でも運動神経も普通で喘息持ち、身長もクラスで一番前だった僕は、プロになるまでに300枚のドアを開ける必要があった。人と比べる必要なんてない。自分のペースで、届く範囲の扉に手を伸ばし続けることが一番大切なんです」
才能の有無に関わらず、今日から自分にできる「小さなドア」を見つけ、「挑戦し続ける」こと。その誠実な積み重ねこそが、いつか想像もしなかった場所に自分を連れて行ってくれる。生徒たちは真剣な眼差しでメモを取っていました。
「達成」の定義。幸せが循環する構造
寺嶋選手にとっての「達成」とは、誰かに褒められたり、評価されることではなく、自分の中にあるもの。カンボジアでのボランティア活動(浄水フィルターの設置)のエピソードを通じて、真の「達成」を語ってくれました。
泥水を飲んでいた子どもたちが、設置したフィルターから出る綺麗な水を飲んで「ありがとう」と笑顔を見せてくれた時、「ここまで頑張ってきて本当によかった」と心の底から感じたそうです。寺嶋選手はこの感情こそが「本当の意味での達成」なのだと語ってくださいました。
また、寺嶋選手は「夢は形を変えて叶うこともある」と、広島出身の歌手・HIPPYさんのエピソードも紹介してくれました。HIPPYさんの夢は、「プロ野球選手になって巨人の選手から三振を取ること」でした。プロ野球選手になる夢そのものは実現しませんでしたが、その後、歌手としてマツダスタジアムの始球式に招かれ、巨人の選手と対峙する機会を得ます。夢は、別の形で叶うことになりました。そして、一つの達成は、また新たな夢へと繋がっていきます。
読書と習慣。自分を整えるプロの知恵
トークセッションでは、生徒からの質問に対し、より実践的なアドバイスが飛び出しました。
ミスの乗り越え方
「ただ落ち込むのは時間の無駄。ミスを分解して、技術不足だったのか、それとも消極的な判断だったのか原因を突き止める。原因が分かれば、それは改善という名のチャンスに変わる」
自信の持ち方
「自信は『量』からしか生まれない。質を求める前に、自分が納得できる圧倒的な量をこなすこと」
読書の科学的な活用
年間100冊を読破する寺嶋選手。実はDNA検査の結果、彼は副交感神経が上がりにくい(リラックスしにくい)体質だと判明したそう。「試合後の興奮を鎮め、リラックスして眠りにつくための『道具』として本を使っている」というお話は、受験勉強などでストレスを抱える生徒たちにとって、非常に興味深いライフハックとなりました。
ルーティンの作り方
「ゴミ出しの日(月・水・金)をトレーニングの日とセットにする」など、やりたくないことを日常の動線に組み込む工夫も、今日から真似できる知恵でした。
困難に立ち向かうすべての人へ
講演の締めくくりに、寺嶋選手は自身の現在地について語ってくれました。この2年間で4回もの手術を経験し、一時は引退も考えたという過酷な現実。絶望の淵にいた彼を救ったのは、理学療法士の「大丈夫だよ」という一言と、そしてクラーク高校の校訓でもある「夢・挑戦・達成」という言葉そのものでした。
「僕を支えているのは、まさに皆さんの学校の校訓と同じです。僕も今、リハビリという小さなドアを必死に開けている最中です。もし皆さんがこれから先、苦しくて投げ出したくなった時は、僕の試合を見に来てください。足を引きずりながらでも、必死にもがいてプレーしている僕の姿を見て、『あいつがあんなに頑張っているなら、自分ももう一歩だけ頑張ってみよう』と思ってくれたら、それ以上に嬉しいことはありません」
「夢・挑戦・達成」が寺嶋選手の支えであり、寺嶋選手の姿が生徒の勇気になる。この日、広島キャンパスにはそんな温かい「心の交換」が行われました。
講演を終えた生徒たちの表情は、清々しい決意に満ちていました。明日から開けるべき「小さなドア」が、一人ひとりの心のなかに見つかったはず。寺嶋良選手、魂のこもった素晴らしい時間を本当にありがとうございました。私たちは、寺嶋選手の復活と広島ドラゴンフライズの活躍、そして共に歩む生徒たちの未来を全力で応援しています!
夢の捉え方を考える機会に
講演後、参加した生徒からは、力強い声が寄せられています。
「今日の寺嶋選手の話を聞いて、めちゃくちゃ周りからの情報を大事にしているなと感じました。読書をしたり、先輩後輩関わらず、周りの人から意見をもらったり、そういったことを大事にしてきたからこそ、夢も掴み取れたのかも。僕も将来は公認会計士を目指してるのですが、ここにもどういった目的でこの夢を実現させるのか、しっかりと考えてみたいと思っています。」と小野さん(総合進学コース 3年生)は語ってくれました。