「やる気が続かないんです」 三日坊主は意志の弱さではなく、習慣が育つ途中に起きる自然なことです
「最初はやる気があるんです。でも、続かないんです」
保護者の方から、こうした相談を受けることがあります。
「やる気が続かない」子どもに、親はどう関わればよいのでしょうか。三日坊主を意志の弱さと捉えず、習慣化の仕組みや続かない背景をひもときながら、小さな目標や声かけを通して自律を支える方法を探ります。
この記事ではこんなことがわかります!
・三日坊主を意志の弱さと捉えなくてよい理由
・やる気に頼らず続けるための小さな目標設定
・途切れても戻れる力を育てる親の声かけ
新学期の最初は頑張ろうとする。
テスト前には「今回は本気でやる」と言う。
新しいノートを買うと、少し前向きになる。
でも、数日たつと元に戻ってしまう。
親としては、つい言いたくなりますよね。
「また続かなかったの?」
「最初だけじゃ意味がないでしょ」
「本当にやる気あるの?」
その気持ちは、とてもよく分かります。
でも、僕は「やる気が続かない」という悩みを、本人の弱さだけで片づけたくありません。
そもそも、やる気はそんなに長く続くものではないからです。大人でも同じです。年始に立てた目標が続かなかったり、運動しようと思っても三日で止まったり、資格の勉強を始めても忙しさの中で途切れてしまったりすることがあります。 つまり、やる気が続かないのは、子どもだけの問題ではありません。人間にとって、とても自然なことなのです。だから大切なのは、「もっとやる気を出しなさい」と言うことではありません。やる気がなくても、少し動き出せる仕組みをつくることです。
三日坊主は、根性がないからではない
「三日坊主」という言葉があります。この言葉には、どこか責める響きがあります。
- 「飽きっぽい」
- 「意志が弱い」
- 「根性がない」
- 「どうせ続かない」
そんなふうに、自分を責める言葉として使われることもあります。でも僕は、三日坊主を悪者にしなくていいと思っています。なぜなら、新しいことが続かないのは、脳の仕組みから見ても自然な面があるからです。
習慣は、何度も同じ行動を繰り返すことで、少しずつ自動化されていきます。習慣形成の研究では、新しい行動が自動化されるまでには個人差が大きく、平均で66日ほどかかったと報告されています。つまり、三日で自然に続かないからといって、その子の意志が弱いと決めつける必要はないのです。
脳は、何度も繰り返した行動をだんだん省エネルギーでできるようにしていきます。習慣学習には大脳基底核などの脳の働きが関わることも研究されています。新しい行動が最初から自然に続かないのは、まだその行動が脳の中で「いつもの流れ」になっていないからだと考えることもできます。
そう考えると、三日坊主は失敗ではありません。まだ習慣になる前に、一度止まっただけです。だから大切なのは、「三日で終わった。自分はだめだ」と責めることではありません。
三日で止まったら、また始めればいい。また三日続いたら、それも一つの経験です。
また止まったら、少しやり方を変えて再開すればいい。三日坊主を繰り返しながら、少しずつ続く形を探していく。それくらいの捉え方でいいのです。
やる気は、行動の前にあるとは限らない
多くの人は、「やる気が出たら行動できる」と考えます。
- やる気が出たら勉強する
- やる気が出たら片づける
- やる気が出たら運動する
- やる気が出たら将来のことを考える
でも、実際には逆のこともあります。
少し行動したら、やる気が出てくる。
始めてみたら、思ったより進む。
一問だけ解いたら、もう一問やってみようと思う。
五分だけ机に向かったら、少し集中できる。
つまり、やる気は行動の原因であると同時に、行動の結果でもあるのです。だから、「やる気が出るまで待つ」だけでは、なかなか動き出せません。やる気がない日でも始められるくらい、最初の一歩を小さくする。これが大切です。
以前、「無理」と言ってしまう子には、小さすぎるくらいの一歩が大切だとお話ししました。やる気が続かない子にも、同じことが言えます。最初から大きな目標を立てると、続きません。
- 「毎日二時間勉強する」
- 「次のテストで全教科八十点以上を取る」
- 「今日からスマホを見ない」
- 「毎朝必ず六時に起きる」
こうした目標は、一見立派です。でも、今の生活や気持ちとの距離が大きすぎると、三日で苦しくなります。そして、続かなかった自分を責めることになります。大切なのは、気合いで変えることではありません。続く形に小さく設計することです。
「続かない」のではなく、続く形になっていない
子どもが何かを続けられないとき、大人は「意志が弱い」と見てしまいがちです。でも、僕はこう考えます。

続かないのではなく、続く形になっていないのかもしれない。
たとえば、毎日英単語を三十個覚えると決めた子がいたとします。最初の二日は頑張れた。でも三日目には疲れてしまった。そこで「やっぱり自分は続かない」と思う。でも、本当に問題なのは、その子のやる気でしょうか。
もしかすると、三十個という量が多すぎたのかもしれません。
覚える時間帯が合っていなかったのかもしれません。
書いて覚える方法が、その子に合っていなかったのかもしれません。
成果が見えにくく、面白さを感じられなかったのかもしれません。
つまり、「続かなかった」という結果の中には、次に変えられるヒントがたくさんあります。
だから、親ができるのは、「どうして続かないの」と責めることではありません。「どこで止まったのか」を一緒に見ることです。
- 三日目に止まったのか
- 夜にやろうとして止まったのか
- 量が多くて止まったのか
- やり方が合わなくて止まったのか
- 一人でやるのが難しくて止まったのか
こうして分けて考えると、次の作戦が見えてきます。
習慣化は、小さいことから始める
習慣にしたいことほど、小さく始めることが大切です。
大きな目標を立てると、最初は気分が高まります。でも、その分、疲れている日には重く感じます。
「一時間勉強する」は重い。
でも、「机に座って教科書を開く」ならできるかもしれません。
「英単語を三十個覚える」は重い。
でも、「五個だけ見る」ならできるかもしれません。
「毎日ランニングする」は重い。
でも、「玄関で靴を履く」ならできるかもしれません。
行動の入り口を小さくすると、始める負担が減ります。そして一度始めると、「せっかくだから少しやろうかな」と思えることがあります。これは、子どもを甘やかすことではありません。むしろ、脳の仕組みに合った始め方をするということです。
習慣化は、気合いで壁を登るようなものではありません。小さな階段を何度も上るようなものです。三日で止まったら、階段を一段低くすればいい。時間帯を変えればいい。やり方を変えればいい。そうやって、続く形を探していくのです。
やる気を支える三つの要素
やる気を長く保つには、気持ちだけでは足りません。僕は、少なくとも三つの要素が必要だと思っています。
一つ目は、「目的」です。
なぜそれをやるのか。
それが自分にどうつながるのか。
今やっていることが、どんな未来につながるのか。
目的が見えないことは、続きにくいものです。もちろん、すべての勉強に最初から深い目的を感じる必要はありません。苦手教科もあります。興味がわかない内容もあります。でも、「これをやることで、少しでも自分の選択肢が広がる」「この力がつくと、自分のやりたいことに近づく」と感じられると、行動は少し変わります。
二つ目は、「手応え」です。
人は、まったく変化を感じられないことを続けるのが苦手です。
昨日より少し分かった。
前より早くできた。
一問だけ解けた。
覚えた単語が授業で出てきた。
こうした小さな手応えが、次の行動につながります。
三つ目は、「選択」です。
人から言われたことだけを続けるのは難しいです。
自分で決めたことは、続けやすくなります。
どの教科からやるのか。
何分やるのか。
どの方法で覚えるのか。
一人でやるのか、誰かとやるのか。
紙に書くのか、声に出すのか、動画を見るのか。
小さなことでも、自分で選ぶ経験があると、学びは少し自分のものになります。この「目的」「手応え」「選択」がそろってくると、やる気は少しずつ持続しやすくなります。これまでの記事をお読みになった方はピンと来た方もいらっしゃると思いますが、これは以前お話しした、自律するための3つの要素ですね。
目標は「気分がいい日の自分」ではなく「疲れている日の自分」に合わせる
目標を立てるとき、多くの子は気分が高まっている日の自分を基準にします。
「明日から毎日一時間やる」
「もうスマホは見ない」
「毎朝早く起きる」
決意した瞬間は、本気なのです。嘘をついているわけではありません。でも、三日後の自分は疲れているかもしれません。学校で嫌なことがあるかもしれません。眠いかもしれません。気分が乗らないかもしれません。だから、続けるためには、元気な日の自分ではなく、疲れている日の自分でもできる目標にすることが大切です。
たとえば、
- 「一時間勉強する」ではなく、「まず五分だけ机に向かう」
- 「英単語を三十個覚える」ではなく、「五個だけ確認する」
- 「毎日完璧にノートをまとめる」ではなく、「授業後に一つだけ印をつける」
- 「部屋を全部片づける」ではなく、「机の上の一か所だけ片づける」
これくらいでいいのです。小さすぎると思うかもしれません。でも、続かない大きな目標より、続く小さな目標の方が、子どもの自信になります。
親の声かけは「続けなさい」より「どう続ける?」
家庭でできる支援は、やる気を注入することではありません。続く形を一緒につくることです。子どもが「今回は頑張る」と言ったとき、親はつい「今度こそ続けなさいよ」と言いたくなります。
でも、その言葉だけでは続きません。
代わりに、こんなふうに聞いてみてください。

「何日くらい続けられたらよさそう?」
「疲れている日でもできる形にするとしたら、どれくらい?」
「どの時間帯ならやりやすい?」
「続かなかったときは、どう立て直す?」
「誰かに見てもらう方が続く? 一人の方が続く?」
ここで大切なのは、失敗を前提にしておくことです。続けるというのは、一度も途切れないことではありません。途切れても、また戻れることです。
三日続いて、一日休んで、また始める。
一週間できなくても、次の月曜日から再開する。
計画が合わなかったら、量を半分にする。
やり方が合わなかったら、別の方法を試す。
これが本当の意味での継続です。「一回途切れたら終わり」では、子どもは挑戦しにくくなります。「途切れても戻ればいい」と思えることが、続ける力を育てます。
三日坊主を責めず、三日坊主を使う
三日坊主になったとき、そこで終わりにしないことです。
「三日しか続かなかった」ではなく、
「三日は続いた」と見る。
そして、次にこう考える。
- 「なぜ四日目に止まったのか」
- 「時間が悪かったのか」
- 「量が多かったのか」
- 「やる意味が見えなくなったのか」
- 「一人では難しかったのか」
- 「もっと小さくしたら続くのか」
三日坊主は、失敗の証拠ではありません。自分に合う続け方を探すためのデータです。
そう考えると、子どもは自分を責めなくなります。

「自分はだめだ」ではなく、
「このやり方は合わなかったんだ」
「次は少し変えてみよう」
そう思えるようになります。これはとても大切です。子どもが自分を責め続けると、挑戦そのものが怖くなります。けれど、脳の仕組みを知り、「続かないのは自分の根性だけの問題ではない」と分かると、もう一度やってみる余白が生まれます。
自己理解は、自分を甘やかすためのものではありません。自分を責めずに、次の行動を選ぶためのものです。
クラークで大切にしたい、続けるための伴走
クラーク記念国際高等学校のように、多様な学び方を選べる環境では、「やる気があるかないか」だけで生徒を見るのではなく、その子がどうすれば動き出し、どうすれば続けられるのかを一緒に考えることが大切になります。
自分のペースで学べるからこそ、目標を立てる力が必要になります。
自由度があるからこそ、振り返りが大切になります。
選択肢があるからこそ、自分に合った方法を選ぶ力が必要になります。
先生との面談や日々の対話、リフレクションの時間は、そのための支えになります。

「最近どう?」
「どこで止まっている?」
「次は何から始める?」
「この方法は合っていた?」
「別のやり方に変えてみる?」
こうした対話の中で、子どもは自分の学び方を少しずつ知っていきます。やる気を出すことを求めるのではなく、やる気が揺れても続けられる方法を一緒に探す。それが、学校ができる伴走だと思います。
やる気がない日にも、自分を見捨てない
最後に、保護者の皆さんにお伝えしたいことがあります。やる気が続かない子に対して、大人はつい「もっと頑張れ」と言いたくなります。でも、子どもに本当に育てたいのは、常に高いやる気を保つ力ではありません。やる気がない日にも、自分を見捨てない力です。
- 今日は五分だけやる
- 今日はできなかったけれど、明日また戻る
- この方法は合わなかったから、別の方法にする
- 一人では続かなかったから、誰かに相談する
- 目標が大きすぎたから、小さくする
こうして、自分を責めるのではなく、自分を調整していく。それが、自律へ向かう力です。
「やる気が続かないんです」
その悩みは、決して珍しいものではありません。むしろ、人が何かを学び続けるときに、誰もが出会う壁です。だからこそ、親ができることは、やる気を責めることではありません。
三日坊主を責めずに、「三日続いたね」と見ること。
続かなかった理由を、一緒に探すこと。
やる気がなくても始められる小さな一歩をつくること。
途切れても、また戻れると伝えること。
僕は、子どもたちに「いつもやる気に満ちた人」になってほしいとは思っていません。やる気が揺れる自分を知り、それでも自分なりに行動を立て直せる人になってほしい。その力こそが、学び続ける力であり、これからの社会を生きる力だと思っています。
■山本崇雄先生プロフィール■
進徳女子高等学校校長(2027年度より環太平洋大学広島高等学校)・日本パブリックリレーションズ学会前理事長ほか。 都立中高一貫教育校を経て、2019年より複数の学校及び団体・企業でも活動する二刀流(副業)教師。
Apple Distinguished Educator、LEGO® SERIOUS PLAY® メソッドと教材活用トレーニング終了認定ファシリテーター。「教えない授業」と呼ばれる自律型学習者を育てる授業を実践。子どもから社会人まで、自律型人材育成をテーマにした講演会、出前授業、執筆活動を精力的に行っている。
検定教科書『NEW CROWN ENGLISH SERIES』『My Way』(三省堂)の編集委員を務めるほか、著書に『「学びのミライ地図」の描き方』(学陽書房)『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(日経BP社)、『学校に頼らなければ学力は伸びる』(産業能率大学出版部)『「勉強しなさい!」と言わない子育て 学ぶ力の育て方』(時事通信出版)『「教えない」から学びが育つ』(ウェッジ)ほか、監修書に『21マスで基礎が身につく英語ドリルタテ×ヨコ』シリーズ(アルク)がある。
◼︎note https://note.com/takao_y


