「失敗するのが怖い」と挑戦しないわが子。親はどう背中を押せばいいのでしょうか?
「失敗を怖がって挑戦しません」
「やってみたい気持ちはあるようなのに、なかなか一歩を踏み出しません」
「失敗しそうだと思うと、最初からやらない方を選んでしまいます」
そんな話を、保護者の方から聞くことがあります。
失敗を怖がって挑戦できない子どもに、親はどう関わればよいのでしょうか。
完璧を求めて動けない背景を整理し、小さく始める工夫や、答えを先回りせず
次の一歩を支える声かけのヒントを紹介します。
・失敗を怖がる子が挑戦できなくなる背景
・「60点で始める」小さな挑戦のつくり方
・答えを先回りせず、やり直す力を育てる関わり方
親からすると、もどかしいですよね。
せっかくチャンスがあるのだから、やってみればいい。
失敗したって、そこから学べばいい。
そう思って「大丈夫だよ」「やってみなよ」と声をかけても、本人は動かない。
すると、だんだん心配になってきます。
「このまま、失敗を避けてばかりになったらどうしよう」
僕も息子を育てる中で、そう思ったことは少なくありません。
できれば傷ついてほしくない。
でも、失敗を恐れて何も選べない大人にもなってほしくない。
この二つの思いの間で、親は揺れます。
そんなとき、僕は「挑戦しない=やる気がない」とは考えないようにしています。
もしかすると、その子は挑戦そのものが嫌なのではなく、失敗したときの自分を見るのが怖いのかもしれないからです。
完璧にやりたい子ほど、動けなくなることがある

「どうせやるなら、ちゃんとやりたい」
「中途半端にやるくらいなら、やらない方がいい」
「できないと思われたくない」
こういう気持ちは、決して悪いものではありません。
むしろ、真面目で向上心のある子ほど持ちやすい感覚です。
ただ、「ちゃんとできなければ意味がない」という思いが強くなりすぎると、100点を取れそうにないことには手を出さなくなります。
こうして「失敗しないこと」を優先しているうちに、挑戦する機会そのものが少なくなっていきます。
失敗を避ければ、たしかに傷つくことは減るかもしれません。
でも同時に、「失敗しても意外と何とかなる」という経験もできなくなります。
僕は、子どもに身につけてほしいのは「失敗しない力」ではないと思っています。
失敗したあとに、「さて、次はどうしよう」と考えられる力こそ子どもの人生に必要です。
「失敗してもいいよ」だけでは、少し足りない
教育の場では、「失敗してもいい」という言葉をよく使います。僕自身も使います。
失敗したら怒られる。恥ずかしい思いをする。自分の評価が下がる。
そんな不安でいっぱいの場所では、誰だって挑戦しようとは思えません。
だから、安心して失敗できる環境は必要です。
ただ、僕は「失敗してもいい」で話を終わらせたくはありません。
失敗は、しただけで自動的に学びになるわけではないからです。
たとえば、毎日勉強しようと決めたのに三日で終わってしまった。
そこで、「やっぱり自分は続かない人間なんだ」と思って終われば、
その経験は次の挑戦を遠ざけます。
でも、
「夜にやろうとしたから続かなかったのかな」
「最初から一時間と決めたのが無理だったかもしれない」
「朝に10分ならできるかも」と考えられれば、同じ出来事でも意味が変わります。
以前、生徒たちにもこんな話をしました。
過去に起きた事実は変えられない。
でも、その出来事の意味は、次の行動によって変えることができる。
テストで思うような点が取れなかった事実は消せません。
発表で言葉に詰まったことも、部活動の試合で力を出し切れなかったことも、なかったことにはできません。
けれど、そのあとに何を考え、何を変え、どう動いたかによって、「あの失敗があったから、このやり方に気づいた」という経験には変えられます。
だから、うまくいかなかった子に僕が渡したいのは、
「もし、もう一度やるなら、何を変えたい?」という問いです。
失敗の原因を責めるための問いではありません。
次の一歩を、自分で考えるための問いです。
大きな勇気より、「60点で始める」
とはいえ、失敗が怖くて動けない子に「失敗を恐れるな」と言っても、なかなか難しいものです。
そんなときは、挑戦そのものを小さくしてみます。
僕はよく、「最初は60点でいい」と話します。
一時間勉強しなくても、まず10分。
部活動に入るかどうかを今日決めなくても、まず見学。
発表を完璧につくろうとせず、最初に一枚だけスライドをつくってみる。
探究のテーマだって、一度決めたら最後まで変えてはいけないわけではありません。調べてみて、「何か違う」と思えば、変えればいい。
小さく始めれば、うまくいかなかったときにも修正しやすい。
そして、ここで親が決めてしまわないことも大切です。
「とりあえず、これをやりなさい」ではなく、
「どこまでならやれそう?」
「まず何を試してみる?」
と本人に聞いてみる。自分で決めて、やってみる。うまくいかなければ、振り返る。
そして、もう一度選び直す。
僕が大切にしている目標設定力、メタ認知力、意思決定力は、こういう小さな経験の積み重ねの中で育っていきます。
最初からうまくできる必要はありません。
むしろ、自分で決めたことが思い通りにならず、そこで考え直す経験にこそ
価値があるのだと思います。
親には原因が見えても、少し待ってみる
子どもが失敗すると、大人には原因がすぐに見えることがあります。

「だから早く準備した方がいいって言ったのに」
「そのやり方では無理だと思っていたよ」
「先生に聞けばよかったでしょう」
僕も、言いたくなることがあります。
親は経験がある分、先が見えるんですよね。
だからこそ難しい。
親が答えを言えば、話は早く進みます。
でも、それを繰り返していると、
子どもは「困ったら大人が答えを出してくれる」と学んでしまいます。
そこで、少しだけ待ってみる。

「自分では、何がうまくいかなかったと思う?」
「やる前に考えていたことと、実際は何が違った?」
「もう一回やるなら、どうする?」
それでも困っているようなら、

「何か手伝えることはある?」
と聞いてみる。
僕は、子どもとの距離感を考えるとき、「手を出し過ぎない。でも、見放さない」ということを大切にしています。
「教えない」というと、何もしないことのように聞こえることがありますが、そうではありません。
待つ。
問いを渡す。
必要なら選択肢を示す。
助けを求めてきたら、一緒に考える。
その子が自分で動けるところは任せて、難しいところだけ支える。
子育ては、ずっと手をかけ続けることではなく、こうして少しずつ手を放していく営みなのだと思います。
成功したことより、「やり直したこと」を見てほしい
もう一つ、保護者の皆さんにぜひ見てほしいことがあります。
それは、結果よりも「修正したこと」です。
合格した。
いい点を取った。
発表が成功した。
もちろん、それは一緒に喜んでいい。
でも、それ以上に僕が価値づけたいのは、
という部分です。
なぜなら、結果には、自分ではどうにもならないことも含まれるからです。
一方で、
考えること。
やり方を変えること。
誰かに助けを求めること。
もう一度やってみること。
これは、自分で選べます。
そういう経験を重ねていくと、
子どもの中に少しずつ、「うまくいかなくても、次にやれることはある」という感覚が生まれます。
僕は、それが本当の意味での自信ではないかと思っています。
失敗を怖がらない子にしなくていい
挑戦できる人は、失敗を怖がらない人なのでしょうか。
僕は、そうは思いません。
怖くても、小さく一歩を踏み出せる。
うまくいかなければ、いったん立ち止まれる。
誰かの力が必要なら「助けて」と言える。
そして、「じゃあ次はこうしてみよう」ともう一度決められる。
それが、挑戦できる人なのだと思います。
ですから、失敗を怖がっているわが子を見て、「もっと強い子にしなければ」と焦る必要はありません。性格を変える必要もありません。
最初は小さな挑戦でいい。うまくいかなかったら、一緒に振り返る。
ただし、親がすぐに答えを出さない。
そして、次の一歩はできるだけ本人に選んでもらう。
僕たち大人にできるのは、子どもの人生から失敗を取り除くことではありません。
それよりも、失敗したあと、自分でその意味を変えていける人に育てること。
その方が、ずっと大切ではないでしょうか。
もし、お子さんがうまくいかなかった日があったら、
「どうしてできなかったの?」と聞く代わりに、
「もう一度やるなら、何を変えてみたい?」と聞いてみてください。
少し考えているようなら、待ってみる。
困っていたら、「何か手伝えることはある?」と添える。
手を出し過ぎない。
でも、見放さない。
そんなやり取りの積み重ねの中で、子どもは失敗を「終わり」ではなく、
「次を考える材料」にしていきます。
過去の事実は変えられません。
でも、その意味は、これからの行動で変えられる。
そのことを、子どもたちにはたくさん経験してほしいと思っています。
■山本崇雄先生プロフィール■
進徳女子高等学校校長(2027年度より環太平洋大学広島高等学校)・日本パブリックリレーションズ学会前理事長ほか。 都立中高一貫教育校を経て、2019年より複数の学校及び団体・企業でも活動する二刀流(副業)教師。
Apple Distinguished Educator、LEGO® SERIOUS PLAY® メソッドと教材活用トレーニング終了認定ファシリテーター。「教えない授業」と呼ばれる自律型学習者を育てる授業を実践。子どもから社会人まで、自律型人材育成をテーマにした講演会、出前授業、執筆活動を精力的に行っている。
検定教科書『NEW CROWN ENGLISH SERIES』『My Way』(三省堂)の編集委員を務めるほか、著書に『「学びのミライ地図」の描き方』(学陽書房)『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(日経BP社)、『学校に頼らなければ学力は伸びる』(産業能率大学出版部)『「勉強しなさい!」と言わない子育て 学ぶ力の育て方』(時事通信出版)『「教えない」から学びが育つ』(ウェッジ)ほか、監修書に『21マスで基礎が身につく英語ドリルタテ×ヨコ』シリーズ(アルク)がある。
◼︎note https://note.com/takao_y


