スマホばかりのわが子に、親が最初に見てほしいこと 「うちの子はスマホばかりいじって勉強しないのですが、大丈夫でしょうか?」前編
今回は、保護者の方から本当によく聞く、こんな相談です。
「うちの子、スマホばかり見ていて勉強しないんです」
スマホを悪者にせず、子どもがそこに戻る背景を見つめ、安心できる関係性をつくるヒントを紹介します。
● スマホに向かう子どもの背景
● 家庭に安心できる“空き地”をつくる視点
● ルールより先に見直したい親子の関係性
リビングで寝転がってスマホ。食事の直前までスマホ。
部屋に入ったと思ったら、またスマホ。
声をかけても「あとで」「わかってる」と返ってくるだけ。
課題は終わっているのか、授業についていけているのか、進路のことを考えているのか。
親としては、不安になりますよね。
だからつい、言いたくなります。
僕も親ですから、その気持ちはよく分かります。
わが子の未来を思うほど、スマホを見ている時間が、そのまま大切な何かを失っている時間のように見えてしまうことがあります。
でも、ここで少し立ち止まって考えてみたいのです。
本当に問題なのは、スマホそのものなのでしょうか。
スマホは、いまや特別なものではない
今の高校生にとって、スマホは特別な道具ではありません。
友人とのやりとり、動画、音楽、ゲーム、調べもの、学習、進路情報の収集まで、生活のかなりの部分がスマホとつながっています。
最近の調査でも、高校生のインターネット利用時間は長くなっており、多くの生徒が日常的にスマホを使っています。つまり、スマホとの付き合い方に悩んでいるのは、一部の家庭だけではありません。どの家庭にも起こりうる、現代の子育ての課題なのです。
もちろん、長時間利用によって睡眠が削られたり、課題が進まなかったり、生活リズムが崩れたりしているなら、放っておくわけにはいきません。スマホやゲームの利用を自分でコントロールできない状態が続き、生活の優先順位が大きく崩れている場合には、専門的な支援が必要になることもあります。
ただし、僕がここで大切にしたいのは、スマホを「悪者」にして終わらせないことです。
スマホばかり見ている子どもを前にしたとき、僕たち大人は「どうやってやめさせるか」を考えがちです。でも、本当に必要なのは、「なぜそこに戻っていくのか」を見ることではないでしょうか。
スマホ依存は、本人だけの問題ではない
数年前、依存症を専門とする医師の講演を聞く機会がありました。
そのとき、強く印象に残った話があります。
スマホやゲームへの依存的な状態は、本人への働きかけだけではなく、家族の関わり方が変わることで改善に向かうケースがある、という話でした。
最初に聞いたとき、僕は少し驚きました。
「えっ、本人が変わらなくてもいいの?」と思ったのです。
でも、話を聞き進めるうちに、むしろそこに本質があるのではないかと感じるようになりました。
スマホの問題は、単に「使いすぎ」「意志が弱い」という本人だけの問題ではない場合があります。
背景には、家庭の中で安心して話せるか、失敗しても受け止めてもらえるか、自分の存在を認めてもらえているか、という関係性の問題が隠れていることがあります。
子どもがスマホから離れられないとき、そこには「楽しいから」だけではなく、「そこにいると安心できるから」という理由があるかもしれません。
スマホは、子どもにとっての“空き地”なのかもしれない
僕たちが子どもの頃、放課後になると自然に集まる場所がありました。
公園だったり、空き地だったり、誰かの家の前だったり。
大人に細かく管理されるわけでもなく、何か立派な目的があるわけでもなく、ただ集まって、話して、遊んで、時にはけんかもして、また仲直りする。
そこには、子どもだけの時間と空間がありました。
今の子どもたちにとって、その“空き地”がスマホの中にあるのかもしれません。
SNSの中には、同じ話題で笑い合える仲間がいます。ゲームの中には、役割があり、達成感があり、自分を必要としてくれるチームがあります。動画の中には、疲れた心を一時的に忘れさせてくれる世界があります。
家では「勉強は?」「課題は?」「将来は?」と聞かれる。学校でも評価される。成績や提出物や進路の話から逃れられない。そんな中で、スマホの中だけが、否定されずにいられる場所になっている子もいるのです。
だとしたら、頭ごなしにスマホを取り上げることは、その子にとって“空き地”を取り上げることになるかもしれません。もちろん、危険な使い方や健康を損なう使い方を見過ごしていいわけではありません。でも、「取り上げる」だけでは、子どもは安心できる場所を失うだけになってしまうことがあります。
だから僕は、こう考えたいのです。
スマホを取り上げる前に、 現実の中にもう一つの“空き地”をつくれないだろうか。 家の中に「ここにいていい」と思える場所はあるか。
でも、子どもには「80点では認めてもらえない」と届いてしまうことがあります。
進路の話でも同じです。
「安定した仕事に就いてほしい」「ちゃんとした大学に行ってほしい」という親の願いは、決して悪いものではありません。
けれど、それが強くなりすぎると、子どもは「自分の本音を言っても否定される」と感じてしまうことがあります。
すると、子どもは少しずつ話さなくなります。
部屋にこもります。
スマホの中に戻っていきます。
そこでは、少なくとも否定されない。
そこには、話を聞いてくれる誰かがいる。
そして、点数や進路とは関係ない自分でいられる。
そう考えると、
スマホに向かう姿は、ただの怠けではなく「安心できる場所を探している姿」なのかもしれません。
最初に変えるのは、ルールではなく関係性
スマホの問題が起きると、多くの家庭ではまずルールを作ろうとします。
「夜10時以降は禁止」
「勉強が終わるまで禁止」
「成績が下がったら没収」
もちろん、ルールは必要です。
特に睡眠、課金、個人情報、知らない人とのつながり、誹謗中傷などについては、大人が責任を持って関わる必要があります。
でも、関係性が壊れたままルールだけを強めると、子どもはさらに反発します。
あるいは、親に隠れて使うようになります。
だから、まず必要なのは「スマホをどうするか」の前に、
「この子は家の中で安心して話せているだろうか」と見直すことです。
スマホの話をしているようで、実は子ども自身の話を聞いていく。
そこから、少しずつ対話が戻ってきます。
💡この回でお伝えしたいこと💡
それは、スマホ依存は本人だけの問題ではない、ということです。
スマホは、子どもにとって安心できる“空き地”になっているかもしれない。
だからこそ、ただ取り上げるのではなく、
家庭や学校の中に、もう一つの安心できる場所をつくることが大切なのです。
次回は、
この続きとして、スマホをめぐる家庭での具体的な関わり方を考えます。
「やめさせる」のではなく、「自分で戻ってこられる力」をどう育てるのか。
「教えない授業」の視点から、親ができる声かけと支援を具体的に見ていきたいと思います。
■山本崇雄先生プロフィール■
進徳女子高等学校校長(2027年度より環太平洋大学広島高等学校)・日本パブリックリレーションズ学会前理事長ほか。 都立中高一貫教育校を経て、2019年より複数の学校及び団体・企業でも活動する二刀流(副業)教師。
Apple Distinguished Educator、LEGO® SERIOUS PLAY® メソッドと教材活用トレーニング終了認定ファシリテーター。「教えない授業」と呼ばれる自律型学習者を育てる授業を実践。子どもから社会人まで、自律型人材育成をテーマにした講演会、出前授業、執筆活動を精力的に行っている。
検定教科書『NEW CROWN ENGLISH SERIES』『My Way』(三省堂)の編集委員を務めるほか、著書に『「学びのミライ地図」の描き方』(学陽書房)『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(日経BP社)、『学校に頼らなければ学力は伸びる』(産業能率大学出版部)『「勉強しなさい!」と言わない子育て 学ぶ力の育て方』(時事通信出版)『「教えない」から学びが育つ』(ウェッジ)ほか、監修書に『21マスで基礎が身につく英語ドリルタテ×ヨコ』シリーズ(アルク)がある。
◼︎note https://note.com/takao_y


