メニュー

スマホを取り上げる前に、家庭でできること          「うちの子はスマホばかりいじって勉強しないのですが、大丈夫でしょうか?」後編

前回は、スマホばかり見ている子どもの姿を、
ただの「怠け」や「意志の弱さ」と決めつけないことについて書きました。

子どもにとってスマホは、友人とつながる場所であり、安心できる場所であり、
時には現実から少し離れて息をつける“空き地”のような場所になっているかもしれません。

だからこそ、スマホを取り上げる前に、まず見たいのは関係性です。

家の中に「ここにいていい」と思える空気があるか。
失敗しても話せる関係があるか。
点数や進路の話だけでなく、その子自身の話を聞く時間があるか。

では、そのうえで、家庭では具体的に何ができるのでしょうか。

この記事ではこんなことがわかります!

取り上げる前にできる声かけやルールづくりを通して、自分で使い方を考える力を支えるヒントを紹介します。
● スマホを取り上げる前に見直したい親子関係
● 自分で戻ってこられる力の育て方
● 家庭でできる声かけとルールづくりの工夫

目次

「やめさせる」より、「自分で戻ってこられる力」を育てる

僕がこれまで実践してきた「教えない授業」は、子どもを放っておく授業ではありません。

教師が一方的に答えを渡すのではなく、子どもが自分で目標を立て、今の自分の状態を見つめ、
必要な方法を選び取っていく力を育てる授業です。

スマホとの付き合い方も、同じだと思っています。
大切なのは、「親に言われたからやめる」ことではありません。
「自分で気づいて、自分で戻ってこられる」ことです。

そのためには、3つの力が必要です。

1つ目は、目標設定力です。
自分は何を大切にしたいのか。今日は何を終わらせたいのか。今週、どんな状態で過ごしたいのかを考える力です。

2つ目は、メタ認知力です。
今の自分は、睡眠や学習や気持ちの面でどんな状態なのか。スマホを使ったあと、元気になっているのか、逆に疲れているのか。自分を少し離れたところから見る力です。

3つ目は、意思決定力です。
そのうえで、今日はどう使うのか。どのタイミングで置くのか。
何を優先するのかを自分で決める力です。

これを親が代わりに決め続けてしまうと、子どもはいつまでも自分で調整する練習ができません。
自転車の練習と同じです。最初は支える。
でも、いつまでも後ろを押さえ続けていたら、自分でバランスを取る経験ができません。
少しふらついても、自分で立て直す経験が必要なのです。

最初の一言を変えてみる

スマホを見ている子どもに、いきなりこう言いたくなるかもしれません。

「またスマホ?」
「勉強は?」
「取り上げるよ」

この言葉が絶対にダメというわけではありません。
親だって人間です。疲れている日もあります。感情的になる日もあります。
ただ、子どもの主体性を育てたいなら、最初の一言を少し変えてみてほしいのです。

たとえば、こんな言い方です。

「最近スマホの時間が長くなっているように見えて、
 僕は少し心配しているんだけど、自分ではどう感じてる?」

ポイントは、責めるのではなく、親の心配を主語にして伝えることです。
「あなたはダメ」ではなく、「僕は心配している」。

そのうえで、本人の見方を聞く。

子どもが「別に普通」と答えたら、そこで終わりではありません。

「そうなんだね。じゃあ、自分では何時間くらい使っている感覚?」
「睡眠には影響していない?」
「課題に取りかかる時間は、自分ではどう思ってる?」
「一週間だけ、使い方を一緒に観察してみる?」

それだけで、会話の空気は少し変わります。

家庭で使える三つの問い

僕が大事にしている問いがあります。

💡「どうしたの?」
💡「どうしたいの?」
💡「何か手伝えることはある?」

これは、子どもを問い詰める言葉ではありません。
子どもが自分の状態を見つめ、自分の意思を取り戻すための言葉です。

スマホの場面なら、こう使えます。

「最近、夜遅くまでスマホを見ているみたいだけど、どうしたの?」
「勉強や睡眠のことも含めて、本当はどうしたい?」
「自分で決めてやってみるなら、何か手伝えることはある?」

この三つの問いには、子どもを信じる姿勢が入っています。

親が答えを決めるのではなく、本人に考える場所を返していく。これが大切です。

ルールは「命令」ではなく「実験」にする

スマホのルールを作るとき、多くの家庭で失敗しやすいのは、親が一方的に決めてしまうことです。

「夜10時以降は禁止」
「勉強が終わるまで禁止」
「成績が下がったら没収」

もちろん、安全面や健康面で親が線を引く必要がある場面はあります。
特に睡眠、課金、個人情報、誹謗中傷、危険なつながりについては、親が責任を持って関わる必要があります。

ただ、学習習慣を育てたい場合は、「禁止」だけではなかなか続きません。
子どもの中に、自分で決めた感覚がないからです。

📢おすすめは、ルールを「実験」にすることです。

「まず1週間だけ、
平日は夜11時に充電場所へ置いてみる実験をしない?」

「課題を始める前の30分だけ、
スマホを別の部屋に置くと集中できるか試してみない?」

「自分に合うやり方を探すために、3パターン試してみようか」

実験なら、失敗しても責める必要がありません。

「このやり方は合わなかったね。次はどうする?」と言えます。

この「次はどうする?」が、自律を育てます。

クラークでの学びは、現実の“居場所”にもなる

通信制高校での学びには、時間や場所の柔軟さがあります。
だからこそ、子ども自身が「どう学ぶか」を考える機会が増えます。
これは、スマホとの付き合い方にもつながります。

こうした経験は、まさに自律の練習です。
そして、学校が子どもにとって安心できる居場所になることも、とても大切です。
先生との対話、仲間とのつながり、探究活動、行事、キャンパスでの小さな成功体験。
スマホの中だけではなく、現実の中にも「ここにいていい」と思える場所が増えていく。
そのとき、子どもは少しずつスマホの外の世界にも戻ってこられるようになります。

自律を支えるのは、信じる言葉

スマホばかり見ているわが子を前にすると、不安になるのは当然です。
でも、その不安から出てくる言葉が、子どもを追い詰めてしまうことがあります。

「なんでまたスマホ見てるの!」
「そんなことしてたら将来困るよ」
「どうせ自分ではできないんだから」

こうした言葉を浴び続けると、
子どもは自分のことを「どうせ自分はダメなんだ」と見るようになります。

では、こんな言葉ならどうでしょうか。

「あなたなら、少しずつコントロールできるようになると思う」
「失敗しても、またやり直せばいい」
    「一緒に考えることはできるよ」
「自分で決める練習をしていこう」

子どもは、大人の言葉を通して自分を見るようになります。
だからこそ、信じる言葉を、信じて届けることが大切なのです。

もちろん、一度言っただけで変わるわけではありません。
次の日もスマホを見ているかもしれません。
また約束を破るかもしれません。親のほうががっかりする日もあるでしょう。
それでも、子どもは経験を重ねながら育っていきます。

その積み重ねが、非認知能力を育てます。

大丈夫かどうかは、スマホの時間だけでは決まらない

「うちの子はスマホばかりいじって勉強しないのですが、大丈夫でしょうか?」

この問いに、僕はこう答えたいと思います。

大丈夫かどうかは、
スマホを何時間見ているかだけでは決まりません

本当に見たいのは、その子が安心できる居場所を持てているか。
自分の状態に気づく力が育っているか。
自分で決める経験を積めているか。
失敗したあとに、もう一度やり直せる関係があるか。そこが大切なんです。

💡この回でお伝えしたいこと💡


スマホは、子どもの主体性を奪う道具にもなります。
でも同時に、主体性を育てるきっかけにもなります。

親がすべてを管理するのではなく、子どもが自分で使い方を考えられるように支える。
スマホを取り上げる前に、家庭の中に、学校の中に、現実の“空き地”を増やしていく。
そこから、子どもは少しずつ自分の力で戻ってこられるようになります。

今日、スマホを見ているわが子にかける一言を、少しだけ変えてみる。

「またスマホ?」ではなく、
「最近どう?」

その一言から、親子の関係が変わり始めるかもしれません。

■山本崇雄先生プロフィール■

進徳女子高等学校校長(2027年度より環太平洋大学広島高等学校)・日本パブリックリレーションズ学会前理事長ほか。 都立中高一貫教育校を経て、2019年より複数の学校及び団体・企業でも活動する二刀流(副業)教師。

Apple Distinguished Educator、LEGO® SERIOUS PLAY® メソッドと教材活用トレーニング終了認定ファシリテーター。「教えない授業」と呼ばれる自律型学習者を育てる授業を実践。子どもから社会人まで、自律型人材育成をテーマにした講演会、出前授業、執筆活動を精力的に行っている。

検定教科書『NEW CROWN ENGLISH SERIES』『My Way』(三省堂)の編集委員を務めるほか、著書に『「学びのミライ地図」の描き方』(学陽書房)『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(日経BP社)、『学校に頼らなければ学力は伸びる』(産業能率大学出版部)『「勉強しなさい!」と言わない子育て 学ぶ力の育て方』(時事通信出版)『「教えない」から学びが育つ』(ウェッジ)ほか、監修書に『21マスで基礎が身につく英語ドリルタテ×ヨコ』シリーズ(アルク)がある。  

◼︎Official Website

◼︎note https://note.com/takao_y

  • URLをコピーしました!
目次