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「子どもが、何がしたいのか分からないみたいで…」後編    夢は一つに決めなくていい。経験の中で、自分の道は見えてくる

前回は、「何がしたいのか分からない」という子どもを、夢がない子として見るのではなく、まだ出会う途中の子として見ることについて書きました。

この記事ではこんなことがわかります!

「子どもが何がしたいのか分からない」と悩む進路について。子どもが何がしたいのか分からないと感じる親御さんも多いのではないでしょうか。
夢を急いで決めさせず、興味や体験を広げながら、自分に合う道を見つける支え方を紹介します。

・目標を縦に深める子、横に広げる子の違い
・経験を広げながら進路のヒントを見つける方法
・夢を急がず、親が子どもの未来を支える関わり方

目次

進路は、いきなり職業名から始めなくてもいい

「少し面白い」「なんとなく気になる」「嫌じゃない」くらいの小さな感覚から、少しずつ自分の輪郭が見えてくる。

今回は、その続きを考えていきます。

子どもが自分の未来を見つけていくとき、実は進み方にはいくつかのタイプがあります。
すぐに目標を決めて一直線に進める子もいれば、いろいろ経験してみないと方向が見えてこない子もいます。

どちらが良い、悪いではありません。大事なのは、その子に合った進み方を一緒に探すことです。

縦に深める子、横に広げる子

目標の持ち方には、いくつかのタイプがあります。

一つは、縦に深めていくタイプです。

1年後、5年後、10年後を見据えて、「そのために今何をするか」を考えられる子
目標から逆算するのが比較的得意な子です。

「この大学に行きたい」
「この資格を取りたい」
「この仕事に就きたい」

こういう子には、こんな声かけが合います。

目標が見えている子は、その目標を現実の行動に分解していくことで前に進みやすくなります。

「その目標に近づくには、今何をしておくとよさそう?」
「半年後には、どんな状態になっていたい?」
「今日できる一歩にすると、何になるかな?」

一方で、横に広げながら見つけていくタイプの子もいます。

今はまだ決まっていない。
でも、いろいろ試す中でだんだん見えてくる。
やってみないと、自分に合うかどうか分からない。

このタイプの子に、いきなり「10年後の目標は?」と聞いても、なかなか動き出せません。

そんなときは、経験の幅を広げる声かけが合います。

「普段と違う場所に行ってみる?」
「面白そうな人の話を聞いてみる?」
「苦手だと思っていたことを、少しだけ試してみる?」
「いつもと違う道を歩くだけでも、発見があるかもしれないね」

”海外に行く”という選択肢

そして、もし可能であれば、僕は短期でもいいので海外に行ってみることをおすすめしたいと思っています。語学を完璧に身につけるため、というよりも、まったく違う文化や価値観の中に身を置いてみることに大きな意味があります

日本では当たり前だと思っていたことが、海外では当たり前ではない。反対に、日本では少し変わっていると思われることが、別の国では自然に受け止められることもあります。

海外に出ると、日本人である自分がマイノリティーになる経験をします。

言葉が通じにくい。
空気を読んでも伝わらない。
自分の常識が通用しない。

そんな経験は、決して楽なものばかりではありません。

でも、その少しの不自由さが、自分を広げてくれます

「自分は何を大切にしているのか」
「日本のよさはどこにあるのか」
「逆に、日本の中にいるだけでは見えにくい窮屈さは何なのか」

海外に出ることで、日本を外側から見る視点が生まれます。そして、その視点は、自分自身を少し離れたところから見る力にもつながっていきます。

やりたいことがまだ見つかっていない子にとって、こうした経験は大きなヒントになります。

  • 「英語が好きになった」
  • 「海外の人と話すのが面白かった」
  • 「日本の文化をもっと知りたくなった」
  • 「人に伝える仕事に興味が出てきた」
  • 「もっといろいろな価値観に触れてみたいと思った」

最初から大きな目標がなくてもいいのです。知らない場所に行き、知らない価値観に触れ、自分がどう感じるかを見てみる。その経験の中から、思いがけない関心が立ち上がることがあります。

進学はゴールではなく、経験を広げるステージ

大学や専門学校を考えるとき、どうしても「将来の仕事に直結する場所」と見がちです。

もちろん、それも一つの見方です。

ただ、まだ目標がはっきりしていない子にとっては、進学先を「経験を広げるステージ」と捉える方が、前向きになれることがあります。

「大学では、どんな学問をまず体験してみたい?」
「いろいろな分野を少しかじってみたら、何か引っかかるかもしれないね」
「授業だけじゃなくて、ゼミやサークル、地域活動も含めて、どんな経験ができそうかな?」

進学は、人生の最終目的地ではありません。次の景色を見るための場所です。そう考えると、「まだ何がしたいか分からない」という子も、少し呼吸がしやすくなります。

今すぐ一つの夢に絞らなくていい
まずは、自分の経験を増やす場所として考えてみる。

この見方は、進路選択を少しやわらかくしてくれます。

夢や目標は、一つに絞らなくてもいい

進路の話になると、なぜか「一つに決める」ことが求められます。でも、これからの時代、夢や目標は一つでなくてもいいと僕は思っています。

教育に関心がある。
音楽も好き。
海外にも行ってみたい。
人を支える仕事にも興味がある。
ものづくりも気になる。

全部あっていい

人生が長くなり、働き方も学び方も多様になっています。一つの会社、一つの職業、一つの肩書きだけで人生を終える人ばかりではありません。複数の関心を持ち、その時々で組み合わせを変えながら生きていく人も増えています。

僕の息子も、企業で働きながら、夜や週末には音楽の配信をしています。仕事か趣味か、どちらか一つに分けきれない生き方です。でも、本人にとっては、それが自然なのだと思います。

だから子どもがいくつかの興味を持っているなら、無理に一つに絞らせなくてもいい

「どれか一つに決めなさい」ではなく、

「今は五つくらい並べておいてもいいんじゃない?」
「その中で、まず試してみたいものはどれ?」
「続けてみて違うと思ったら、変えてもいいよ」

未来は、一度決めたら変更できない契約書ではありません。書き足しながら、書き換えながら、自分で育てていくものです。

クラークの学びは、「まだ分からない」を育てる場所になる

クラーク記念国際高等学校での学びには、一人ひとりの状況や関心、ペースに応じて、学び方をつくっていける良さがあります。これは、すでに夢が決まっている子だけのための環境ではありません。
むしろ、「まだ分からない」と感じている子にこそ、意味があります

なぜなら、やりたいことは机の前で考え続けているだけでは、なかなか見つからないからです。

人と話す。
体験する。
調べる。
発表する。
誰かの役に立ってみる。
失敗してみる。
違うと思ったら方向を変えてみる。

その中で、少しずつ分かってきます。

「これは面白いかも」
「これは自分に合っているかも」
「これは思っていたのと違うかも」

探究学習も、進路選択も、最初から立派なテーマがなくていい。まずは今の自分から一歩外に出てみることです。

僕が大切にしている「教えない授業」も、子どもが自分で目標を設定し、自分の状態をメタ認知し、手段を選び、行動していく学びです。

目標がある子だけが主体的なのではありません。
目標を探している途中の子も、十分に主体的です。

迷っている子は、止まっているのではありません。
自分に合う道を探すために、内側で準備をしていることもあるのです。

親ができるのは、未来を決めることではなく、光を当てること

子どもが少しでも興味を口にしたとき、大人はつい現実を見せたくなります。

「それで食べていけるの?」
「そんなの無理じゃない?」
「もっと現実的に考えなさい」

どれも、子どもを心配しているからこそ出てくる言葉です。
でも、その一言で、ようやく顔を出した芽が引っ込んでしまうことがあります。

まずは、評価せずに聞いてみる

「それができたら、どんな気持ちになりそう?」
「その未来では、どんな景色が見えてる?」
「そこにいる自分は、どんな顔をしていると思う?」
「今はまだ無理でもいい。いつか、こうなっていたらうれしいと思う未来はある?」

未来を具体的に想像することは、行動への準備になります。

まだ計画がなくてもいい。根拠がなくてもいい。まずは思い描いてみる。

子どもたちは、自分の未来をどれくらい自由に描いていいのか、まだ知らないことがあります。だからこそ、大人がその想像を邪魔しないこと。勝手に整えすぎないこと。一緒に言葉にしていくこと。

それが、親にできる大きな支援です。

「何がしたいのか分からないみたいで…」 この問いに、僕はこう答えたいと思います。

分からないことは、悪いことではありません。
まだ決めつけていない、ということでもあります。

子どもはこれから、たくさんの人に出会います。
いろいろな学びに触れます。
失敗もします。
思っていたことと違う、と気づくこともあります。
その中で、少しずつ自分の輪郭が見えてきます。

だから、親が焦って地図を描かなくていい。
「早く見つけなさい」と急かさなくていい。

親ができるのは、その旅の地図を先に完成させることではありません。
子どもが自分で地図を描き始めるまで、横で小さな灯りを持っていることなのだと思います。

■山本崇雄先生プロフィール■

進徳女子高等学校校長(2027年度より環太平洋大学広島高等学校)・日本パブリックリレーションズ学会前理事長ほか。 都立中高一貫教育校を経て、2019年より複数の学校及び団体・企業でも活動する二刀流(副業)教師。

Apple Distinguished Educator、LEGO® SERIOUS PLAY® メソッドと教材活用トレーニング終了認定ファシリテーター。「教えない授業」と呼ばれる自律型学習者を育てる授業を実践。子どもから社会人まで、自律型人材育成をテーマにした講演会、出前授業、執筆活動を精力的に行っている。

検定教科書『NEW CROWN ENGLISH SERIES』『My Way』(三省堂)の編集委員を務めるほか、著書に『「学びのミライ地図」の描き方』(学陽書房)『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(日経BP社)、『学校に頼らなければ学力は伸びる』(産業能率大学出版部)『「勉強しなさい!」と言わない子育て 学ぶ力の育て方』(時事通信出版)『「教えない」から学びが育つ』(ウェッジ)ほか、監修書に『21マスで基礎が身につく英語ドリルタテ×ヨコ』シリーズ(アルク)がある。  

◼︎Official Website

◼︎note https://note.com/takao_y

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