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「学校に行きたがりません」                  まず必要なのは、登校させることより「今の自分で大丈夫」と思える場所

今回は、「学校に行きたがらない」というご相談です。

この記事ではこんなことがわかります!

子どもが学校に行きたがらなくなると、親としては不安になるものです。
そんなとき大切なのは、登校を急がせることよりも、まず安心できる場所をつくること。
行けない背景の捉え方と、家庭でできる関わり方を考えます。

 ● 「行けない」は怠けではなく心のサインかもしれない
 ● 登校を急ぐ前に家庭で育てたい心理的安全性
 ● 小さな選択肢で学びとつながる支え方

朝になると起きてこない。
前の日の夜は「明日は行く」と言っていたのに、朝になると「やっぱり無理」と言う。
玄関までは行ったのに、そこで動けなくなる。
理由を聞いても、
「わからない」「別に」としか返ってこない。

親としては、不安になりますよね。

「このまま休み癖がついたらどうしよう」
「勉強が遅れてしまうのではないか」
「進級や卒業は大丈夫なのか」
「将来、社会に出られなくなったら・・・」

そう考えると、つい言いたくなります。

「とにかく行きなさい」
「みんな頑張って行っているんだから」
「このままだと困るよ」

僕も、その気持ちはよく分かります。
親は、子どもの未来を思うからこそ焦ります。
学校に行かない日が一日、二日と続くと、その先にあるはずの進路や仕事や社会生活まで、全部崩れてしまうように感じてしまうのです。

でも、ここで一度、立ち止まって考えてみたいのです。

本当に最初に必要なのは、「どうやって学校に行かせるか」なのでしょうか。

目次

「行けない」は、怠けではなくサインかもしれない

子どもが学校に行きたがらないとき、僕はそれをすぐに「怠け」とは見ません。
もちろん、親から見れば、ただ面倒くさがっているように見える日もあるかもしれません。
スマホを見ているし、動画も見ている。ゲームはできる。
だったら学校にも行けるはずだ、と思いたくなるのも自然です。

でも、子どもの中では、学校に向かうためのエネルギーだけが底をついていることがあります。

頭では「行かなきゃ」と思っている。
でも、体が動かない。
理由を説明したいけれど、自分でも言葉にできない。
行けない自分に、本人がいちばんがっかりしている。

そういう状態の子に、「なんで行かないの」と迫ると、子どもはますます自分を責めてしまいます。



   「自分はダメなんだ」
   「親を困らせている」
   「どうせ分かってもらえない」

親としては、不安になりますよね。

この感覚が強くなると、対話は閉じていきます。
学校に行くかどうか以前に、家庭の中でも安心できなくなってしまうのです。

まず高めたいのは、心理的安全性

学校に行きたがらない子にまず必要なのは、正論ではありません。

僕の本でも、肯定的に子どもの話を聞くことで、親や家庭が子どもにとって心理的安全性の高い場所になることの大切さを書いています。
子どもは、否定されると思えば話さなくなります。
逆に、受け止めてもらえると感じると、少しずつ言葉を取り戻していきます。

心理的安全性というと、少し難しく聞こえるかもしれません。
でも、家庭でできることはとてもシンプルです。

すぐに結論を出さない。
原因を決めつけない。
最後まで聞く。
小さな変化を見る。
「行けたかどうか」だけで評価しない。

たとえば、朝の声かけも変えられます。

「今日は行けるの?」の前に、

🔎登校するかどうかを聞く前に、まずその子の状態を見る
それだけで、子どもは「自分を見てもらえている」と感じやすくなります。
対話は、安心の上にしか育ちません。
だから、登校の話をする前に、まず安心を取り戻すことが大切なのです。

社会は、思っている以上に多様になっている

保護者の方が不安になる背景には、
「学校に毎日行けない子は、社会に出てもやっていけないのではないか」という心配があると思います。

その心配は、とてもよく分かります。
ただ、今の社会には本当にいろいろな働き方があります。
朝決まった時間に毎日出社する仕事だけではありません。

フレックスタイムで働く人もいます。
オンラインで仕事をする人もいます。
在宅勤務を組み合わせる人もいます。
複数の仕事を持ちながら、自分に合った働き方をつくっている人もいます。

もちろん、「だから学校に行かなくてもいい」と簡単に言いたいわけではありません。
学校での学び、人との関わり、生活のリズムは大切です。
でも、
朝起きられない日があることや、今の学校の形にうまく合わないことだけで、
その子の未来を決めつけなくていい
のです。

僕の本でも、子育ての最上位目標は、
変化の激しい社会の中で、自律して幸せに生きていく力を育むことだと書いています。
高校、大学、就職という一本道だけでなく、
必要なら立ち止まったり、脇道にそれたり、学び直したりしながら、
自分にとってよい道を選んでいくことも、自律して生きることだと思っています。

大切なのは、「毎日同じ形で学校に行ける子」にすることだけではありません。
自分の状態を知る。
助けを求める。
自分に合う環境を選ぶ。
学び方や働き方を調整する。

必要なときに、また一歩踏み出す。そういう力を育てることです。


「学校に行く・行かない」の二択にしない

学校に行きたがらないとき、親子の会話はどうしても二択になりがちです。

行くのか。
行かないのか。

でも、この二択は子どもを追い詰めます。行けない日は「失敗」になってしまうからです。

そこで大切なのは、選択肢を細かくすることです。

一日全部行くのが難しいなら、午後から行く。
教室が難しいなら、別室に行く。
登校が難しいなら、先生とオンラインで話す。
授業が難しいなら、課題だけ確認する。
今日は休むけれど、夕方に明日の相談をする。

こうして、「学校に行くか行かないか」ではなく、
学びや人とのつながりをどう残すかに視点を変えていくのです。

クラーク記念国際高等学校のように、
一人ひとりの状況やペースに応じて学び方を考えやすい環境では、
この視点がとても大切です。
毎日同じ時間に、同じ場所へ通うことだけが学びではありません。
自分に合った方法で、少しずつ学びとつながり直すことも、大切な一歩です。

「今日は何ならできそう?」
「先生に一言だけ連絡するなら、何を伝えたい?」
「教室じゃなくて、別の形なら関われそう?」
「今週、ひとつだけ試すなら何がいい?」

こうした問いは、子どもに選択肢を返していきます。

「教えない授業」の視点で見る

僕が実践してきた「教えない授業」は、子どもを放っておく授業ではありません。
教師が一方的に答えを渡すのではなく、
子ども自身が自分で考え、学び方を主体的に選び、自ら学ぶ力を育てる授業です。

不登校への関わりにも、この考え方は生かせると思っています。

大人が全部決めるのではなく、子どもが自分の状態を見つめる。
いま何が苦しいのかを、少しずつ言葉にする。
どんな形なら学びに戻れそうかを一緒に考える。
小さな選択を積み重ねる。

これは、目標設定力メタ認知力意思決定力を育てる経験です。

「いつから学校に戻るの?」と聞く前に、

「今週、少し楽に過ごすために何が必要?」
「学校のことで、いちばん負担になっているのは何?」
「先生に相談するとしたら、何を分かっておいてほしい?」
「次の一歩を、ものすごく小さくするとしたら何だろう?」

と聞いてみる。

子どもはすぐに答えられないかもしれません。
それでも、問い続けることで、自分の状態を少しずつ言葉にできるようになります。

親が届けたい言葉

避けたいのは、親の不安をそのままぶつける言葉です。

「このままだと将来困るよ」
「みんなは行っているよ」
「そんなことで休んでいたら社会で通用しないよ」
「いつまでそうしているの?」


どれも、親の心配から出てくる言葉です。
でも、子どもには「今の自分ではダメだ」と届いてしまうことがあります。
代わりに、こんな言葉を届けてみてください。

   「行けないくらい、何かしんどいんだね」
   「理由が言えなくても大丈夫。少しずつ一緒に整理しよう」
   「学校に戻すことだけを急がないよ」
   「でも、あなたの学びや人とのつながりは、一緒に考えたい」
   「家族は味方だからね」

僕の本でも、どんな失敗をしても家族は味方だと伝え、温かく見守る環境を整えながら手を離していくことが大切だと書いています。

これは、不登校の場面でも同じです。
放っておくのではありません。
急かすのでもありません。

安心できる場所をつくり、必要な支援につなぎながら、子どもが自分で次の一歩を選べるように支えるのです。

学校とつながることを、親だけで抱えない

学校に行きたがらない状態が続くと、親だけで抱え込んでしまうことがあります。

でも、これは家庭だけで解決しなくていい問題です。

担任の先生、キャンパスの先生、スクールカウンセラー、医療機関、地域の相談機関など、つながれる大人を増やしてください。

特に、眠れない、食べられない、強い不安が続く、自傷をほのめかす、暴力や極端なふさぎ込みがある場合は、早めに専門家につなぐことが大切です。

「学校に戻すため」だけではありません。
その子が安心して生きるために、支える大人を増やすのです。

子どもが親には話せないことを、先生には話せることもあります。
先生にも話せないことを、カウンセラーには話せることもあります。
親がすべての答えを持たなくていいのです。

大丈夫かどうかは、登校日数だけでは決まらない

「学校に行きたがりません。大丈夫でしょうか?」

この問いに、僕はこう答えたいと思います。

大丈夫かどうかは、学校に行った日数だけでは決まりません。

本当に見たいのは、

その子が安心できる場所を持てているか。

自分の状態を少しずつ言葉にできているか。
学びや人とのつながりが、完全に切れていないか。
小さな一歩を、自分で選ぶ経験ができているか。

学校に行けない時期があっても、人生が終わるわけではありません。
でも、その時期に「自分はダメだ」と思い込んでしまうことは、できるだけ避けたい。

だからこそ、親が届ける言葉は大切です。

「早く行きなさい」ではなく、
「今のあなたの状態を一緒に見ていこう」

「休んでばかりでどうするの」ではなく、
「学びにつながる方法を一緒に探そう」

「このままでは困るよ」ではなく、
「あなたの未来を、僕はあきらめていないよ」

まずは、「今の自分でも大丈夫」と思える場所をつくる。


そこから、対話が始まります。対話が始まれば、次の選択肢が見えてきます。

子どもは、安心できる場所からしか、本当の意味では動き出せません。

■山本崇雄先生プロフィール■

進徳女子高等学校校長(2027年度より環太平洋大学広島高等学校)・日本パブリックリレーションズ学会前理事長ほか。 都立中高一貫教育校を経て、2019年より複数の学校及び団体・企業でも活動する二刀流(副業)教師。

Apple Distinguished Educator、LEGO® SERIOUS PLAY® メソッドと教材活用トレーニング終了認定ファシリテーター。「教えない授業」と呼ばれる自律型学習者を育てる授業を実践。子どもから社会人まで、自律型人材育成をテーマにした講演会、出前授業、執筆活動を精力的に行っている。

検定教科書『NEW CROWN ENGLISH SERIES』『My Way』(三省堂)の編集委員を務めるほか、著書に『「学びのミライ地図」の描き方』(学陽書房)『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(日経BP社)、『学校に頼らなければ学力は伸びる』(産業能率大学出版部)『「勉強しなさい!」と言わない子育て 学ぶ力の育て方』(時事通信出版)『「教えない」から学びが育つ』(ウェッジ)ほか、監修書に『21マスで基礎が身につく英語ドリルタテ×ヨコ』シリーズ(アルク)がある。  

◼︎Official Website

◼︎note https://note.com/takao_y

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