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「世の中の変化が激しい中、進路のアドバイスはどうすればいいのでしょうか」

大切なのは、親が正解を示す時代から、子どもが選び続ける力を育てる時代へと変化していることを認識することです、

この記事ではこんなことがわかります!

変化の激しい時代、子どもの進路にどう助言すればよいのでしょうか。

親の経験を「正解」にせず、興味や価値観を引き出す問いかけや判断軸のつくり方から、自分で選び、学び直し、選び直せる力を育てる関わり方を考えます。

この記事ではこんなことがわかります!
・親の経験を「正解」にしない進路の支え方
・子どもの判断軸を育てる問いかけのヒント
・変化の中で自分で選び直せる力の育て方

大学に行った方がいいのか。
専門学校の方がいいのか。
資格を取った方がいいのか。
安定した仕事を目指した方がいいのか。
好きなことを優先していいのか。
AIが広がる時代に、どんな仕事が残るのか。

親としては、不安になりますよね。
自分たちが進路を選んだ時代とは、社会の状況が大きく変わっています。
働き方も、学び方も、会社との関わり方も、どんどん多様になっています。

昔であれば、「この学校に行けば安心」「この会社に入れば安定」「この資格を取れば一生困らない」と言いやすい時代があったかもしれません。

でも今は、そう単純には言えません。だからこそ、親は悩むのです。

「自分の経験をもとにアドバイスしていいのだろうか」
「古い価値観を押しつけてしまわないだろうか」
「でも、何も言わないのも無責任ではないか」

この迷いは、とても自然なものだと思います。

ただ、最初に少し厳しいことを言います

変化の激しい時代に、親の経験がそのまま通用するとは限りません。
むしろ、親の側がまずそのことを自覚する必要があります

目次

親の経験は大切。でも、正解ではない

親の経験には、もちろん価値があります。

社会に出て働いてきた経験。
人間関係で悩んだ経験。
お金を稼ぐ大変さを知った経験。
努力が報われた経験。
反対に、思い通りにいかなかった経験。

そうした経験は、子どもにとって大切な学びになります。
ただし、その経験を「正解」として渡してしまうと、少し危うくなります。

「この道が安全だ」
「この仕事なら将来困らない」
「この学校に行っておけば間違いない」
「好きなことより、安定を選びなさい」

親としては、子どもを守りたくて言っているのだと思います。
でも、親が知っている“安全な道”が、子どもの時代にもそのまま安全であるとは限りません。

会社に入れば一生安泰。
一つの資格があれば一生困らない。
一つの職業を定年まで続ける。
学びは学校を卒業したら終わる。

こうした前提は、すでに大きく揺らいでいます。
もちろん、安定を考えることは大事です。
収入や生活の見通しを持つことも大切です。
けれど、職業名や学校名だけで将来の安心を判断するのは、だんだん難しくなっています。

これからの安定とは、「一つの正解に乗ること」ではなく、「変化しても学び直し、選び直せること」なのではないでしょうか。

人生100年時代、今の選択が一生の選択ではない

人生100年時代と言われる今、進路の考え方も変わっていきます。

1校の学校を選ぶ。
1つの会社に入る。
1つの職業を一生続ける。

そういう人生ももちろんあります。けれど、それだけが当たり前ではなくなっていきます。

そんな生き方が、これからますます自然になっていくと思います。
そう考えると、高校生の今の選択を「一生を決める選択」として重くしすぎないことも大切です。

もちろん、いい加減に決めていいという意味ではありません。
目の前の選択に真剣に向き合うことは大事です。
でも、今の進路選択が、人生のすべてを決定するわけではありません。

今の選択は、次の経験につながる一歩です。
次の経験は、また次の学びにつながります。
その学びの中で、興味や価値観が変わることもあります。
そして必要があれば、また選び直せばいいのです。

進路は、一度で決めきるものではありません。
変化の中で、自分の目標を更新し、必要な学びを選び直していくものです。

これから必要なのは、選び続ける力

変化の激しい時代に必要なのは、「親が見つけた正解の道を進む力」ではありません。
自分で目標を設定し、その目標に向かって必要な学びを選び、自分の行動を調整していく力です。

これは、これまでのシリーズでもお話ししてきた力とつながっています。

自分にとって何が大切なのかを考える。
今の自分には何ができて、何が足りないのかを知る。
目標に向かうために、どんな学び方や環境を選ぶのかを決める。
やってみて、振り返り、必要なら選び直す。

この力があれば、社会が変化しても、自分の人生を他人任せにしなくて済みます。
僕は、学校で育てたい力の一つは、この「選択する力だと思っています。

何を学ぶか。
どう学ぶか。
誰と学ぶか。
どんな活動に挑戦するか。
どんな失敗から何を学ぶか。
次にどの道を選ぶか。

学校生活の中に、こうした選択の機会があることが大事です。
選択する経験を重ねていない子に、ある日突然、「進路を決めなさい」と言っても難しいのです。
日々の小さな選択の積み重ねが、大きな進路選択を支える土台になります。

「将来何になりたいの?」だけでは苦しくなる

進路の話になると、大人はつい聞いてしまいます。

「将来、何になりたいの?」

もちろん、この問いが悪いわけではありません。
明確な夢がある子にとっては、力になる問いです。
でも、まだやりたいことが分からない子にとっては、この問いがプレッシャーになることがあります。

何になりたいか分からない。
好きなことはあるけれど、仕事になるか分からない。
興味がいろいろ変わる。
夢と言えるほどのものがない。

そういう子に「将来何になりたいの」と聞き続けると、「決まっていない自分はだめなんだ」と感じてしまうかもしれません。

だから、問いを少し変えてみてほしいのです。

「あなたはどう思う?」
「あなたはどうしたい?」
「どんなことをしていると、時間を忘れる?」
「どのような人を見ると、少し憧れる?」
「どんなことなら、少し調べてみたい?」
「どんな環境なら、自分らしく動けそう?」

職業名を早く決めることよりも、自分の興味や価値観に気づくことが大切です。
進路は、いきなりゴールを決めるものではありません。
まずは、自分の中にある小さな反応を見つけるところから始まります。

家庭で大切にしたい二つの問い

家庭で保護者の方に大切にしてほしい問いがあります。

それは、

この二つです。とてもシンプルな問いです。
でも、この問いを日常的に投げかけられている子は、自分の考えを持つ練習をします。

親が先に正解を言わない。
子どもの答えを急がせない。
「それは違う」とすぐに否定しない。
まず、子ども自身が何を感じ、何を考えているのかを聞く。

これが大切です。
もちろん、子どもの考えが未熟に見えることもあります。
現実が見えていないように感じることもあります。
親としては、すぐに口を出したくなるでしょう。

でも、そこで一度立ち止まってほしいのです。

子どもは、最初から立派な判断軸を持っているわけではありません。
問いかけられ、考え、話し、また考え直す中で、自分の判断軸を育てていきます。
だから、家庭は「正解を教える場所」ではなく、「安心して考えを言える場所」であってほしいのです。

アドバイスより、判断軸を一緒につくる

では、親は進路について何をすればいいのでしょうか。
僕は、親がすべきことは「正解を教えること」ではなく、「判断軸を一緒につくること」だと思っています。判断軸とは、選ぶときに大切にしたい基準です。

たとえば、

自分の興味につながっているか。
学び続けられそうか。
生活の見通しを持てそうか。
人との関わり方が自分に合っているか。
挑戦できる余白があるか。
失敗したときに選び直せるか。
支えてくれる人や環境があるか。

こうした軸を一緒に考えるのです。

親が「こっちにしなさい」と決めるのではなく、子どもが選ぶための材料を増やす。

情報を一緒に集める。
学校説明会に行く。
実際に働いている人の話を聞く。
気になる分野を調べる。
小さく体験してみる。
不安な点を書き出してみる。

そのうえで、「あなたは何を大切にしたい?」と問いかける。これが進路の伴走です。

“好き”だけでも、“安定”だけでも足りない

進路の話では、「好きなことを仕事にした方がいいのか」「安定を選んだ方がいいのか」という二択になりがちです。
でも、僕はこの二つを対立させなくていいと思っています。
好きなことだけを追いかけて、生活の見通しがまったく立たないと苦しくなることがあります。

反対に、安定だけを求めて、自分の興味や価値観を押し殺し続けると、心がすり減ることもあります。大切なのは、好きと現実を行き来することです。

「好きなことは何か」
「それを社会とどうつなげられるか」
「必要な力は何か」
「今からできる準備は何か」
「収入や働き方の見通しはどうか」
「別の形で関わる道はあるか」

たとえば、絵が好きだからといって、必ず画家になる必要はありません。
デザイン、広告、映像、ゲーム、教育、福祉、地域活動など、表現が生きる場はたくさんあります。
人と話すのが好きだからといって、営業だけが道ではありません。
相談支援、企画、接客、広報、ファシリテーションなど、いろいろな形があります。

機械が好き、文章が好き、動物が好き、子どもが好き、料理が好き、ゲームが好き。
その好きは、職業名に直結しなくても、進路を考える入口になります。
親ができるのは、「それでは食べていけない」とすぐに切ることではなく、「その好きは、どんな社会の場面で生かせるだろう」と広げてあげることです。

変化の時代に必要なのは、決めた道を守る力だけではない

これからの時代に必要なのは、一度決めた道を絶対に変えない力ではありません。
むしろ、変化に応じて学び直し、組み替え、選び直す力です。

仕事の形も変わります。
必要なスキルも変わります。
社会の課題も変わります。
自分の興味や価値観も変わります。

そのときに、「一度決めたから変えてはいけない」と思っていると苦しくなります。
もちろん、すぐに投げ出していいという意味ではありません。
努力を続けることは大切です。
以前の回でもお話ししたように、結果に表れなくても努力を続ける力は、人生を支える大切な非認知能力です。

でも、続けることと、固執することは違います。

やってみたから分かることがあります。
合わなかったから見えることがあります。
失敗したから次の選択が具体的になることがあります。

進路選択で大切なのは、最初から正解を選ぶことではありません。
選んだ後に、学び続けられること。
違ったときに、立て直せること。
必要な人に相談できること。
自分の言葉で次の選択を語れること。

これが、変化の時代を生きる力だと思います。

親の不安を、子どもの進路に乗せすぎない

進路の話になると、親の不安が強く出ます。それは当然です。

子どもには幸せになってほしい。
苦労してほしくない。
生活に困ってほしくない。
後悔してほしくない。

その願いは、親としてとても自然です。

ただ、その不安をそのまま子どもに渡してしまうと、子どもは自分の進路を考えにくくなります。

「そんな道で大丈夫なの?」
「もっと安定した方がいいんじゃない?」
「あなたには無理じゃない?」
「普通はこうするものだよ」

こう言われ続けると、子どもは自分の本音を話さなくなります。

親に否定されない答えを探すようになります。
自分の興味より、親が安心する選択を選ぶようになります。
うまくいかなかったとき、「親がそう言ったから」と思うようになります。
これは、子どもの自己決定を弱くしてしまいます。
親の不安をなくす必要はありません。
不安があるなら、「僕はこういう点が心配だ」と率直に伝えていいのです。

ただし、最後にこう添えてほしいのです。

「でも、あなたがどう考えるかを聞きたい」
「一緒に情報を集めよう」
「決める前に、いくつか試してみよう」
「どの道を選んでも、考え続けることを応援するよ」

不安を押しつけるのではなく、対話の材料にする。これが大切です。

クラークでできる、進路を“自分ごと”にする学び

クラーク記念国際高等学校のように、多様な生徒が集まる学校では、進路指導も一つの型にはめるものではありません。

大学進学を目指す生徒もいます。
専門分野を深めたい生徒もいます。
好きなことを探している途中の生徒もいます。
社会との接点を少しずつ増やしたい生徒もいます。
まずは生活や学びを立て直すことから始める生徒もいます。

大切なのは、その子の現在地から出発することです。
探究学習やプロジェクト型の学び、先生との面談、日々の振り返りは、進路を“自分ごと”にしていくための大切な機会になります。

「自分は何に関心があるのか」
「どんな課題に心が動くのか」
「人とどう関わると力を発揮しやすいのか」
「どんな学び方なら続けられるのか」
「社会の中で、どんな役割を持ちたいのか」

こうした問いに向き合う中で、進路は少しずつ形になっていきます。
進路は、紙に書く希望先だけではありません。
日々の学び方、挑戦したこと、失敗したこと、人との出会い、振り返りの積み重ねそのものが、進路をつくっていくのです。

学校で選択する力を育てること。
家庭で「あなたはどう思う?」「あなたはどうしたい?」と問い続けること。

この両方がつながったとき、子どもは少しずつ、自分の進路を自分の言葉で語れるようになります。

子どもに渡したいのは、答えではなく問い

最後に、保護者の皆さんにお伝えしたいことがあります。

世の中の変化が激しい時代に、親が子どもへ完璧な進路の答えを渡すことはできません。
むしろ、「親の時代の正解」を渡しすぎることが、子どもの可能性を狭めてしまうこともあります。

でも、渡せるものがあります。

それは、問いです。

「あなたは何を大切にしたい?」
「どんなときに、自分らしくいられる?」
「どんな力を伸ばしたい?」
「誰と、どんな社会をつくりたい?」
「その選択が違ったと分かったら、次にどうする?」

こうした問いを持っている子は、変化の中でも考え続けることができます。
親の役割は、未来を予測して正解を当てることではありません。
子どもが未来の中で、自分で考え、選び、学び直し、選び直せるように支えることです。

「世の中の変化が激しい中、進路のアドバイスはどうすればいいのでしょう」

その問いへの僕の答えは、こうです。

アドバイスを“答え”として渡すのではなく、“考える材料”として渡す。
親の経験がそのまま通用しない時代だと自覚する。
子どもが目標を設定し、必要な学びを自分で選ぶ力を育てる。
一度の選択で人生を決めようとせず、選び直せる力を育てる。

これからの時代に必要なのは、変化しない安全な道を探すことではありません。
変化の中でも、自分の足で立ち、学び続け、必要なときに人とつながりながら、自分の道をつくっていく力です。

今の選択は、一生を縛るものではありません。
今の選択は、次の挑戦への入り口です。

僕は、進路指導とは、子どもをどこかに当てはめることではなく、子どもが自分の人生を何度でも選び直せるようにすることだと思っています。

■山本崇雄先生プロフィール■

進徳女子高等学校校長(2027年度より環太平洋大学広島高等学校)・日本パブリックリレーションズ学会前理事長ほか。 都立中高一貫教育校を経て、2019年より複数の学校及び団体・企業でも活動する二刀流(副業)教師。

Apple Distinguished Educator、LEGO® SERIOUS PLAY® メソッドと教材活用トレーニング終了認定ファシリテーター。「教えない授業」と呼ばれる自律型学習者を育てる授業を実践。子どもから社会人まで、自律型人材育成をテーマにした講演会、出前授業、執筆活動を精力的に行っている。

検定教科書『NEW CROWN ENGLISH SERIES』『My Way』(三省堂)の編集委員を務めるほか、著書に『「学びのミライ地図」の描き方』(学陽書房)『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』(日経BP社)、『学校に頼らなければ学力は伸びる』(産業能率大学出版部)『「勉強しなさい!」と言わない子育て 学ぶ力の育て方』(時事通信出版)『「教えない」から学びが育つ』(ウェッジ)ほか、監修書に『21マスで基礎が身につく英語ドリルタテ×ヨコ』シリーズ(アルク)がある。  

◼︎Official Website

◼︎note https://note.com/takao_y

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